海なき夕刻に珊瑚揺れる。
墓場のカーニバルは発想の種子を芽吹かせて、1970年のカセットテープに逆回転をもたらす。
やがて、無機質に斬り落とされる無垢の首も、
夜は傍観するから。
論理無き迷宮を彷徨う蒼い蓄音機
牛の首と薔薇色のパラソル舞い踊る
空はサッカリンを撒いたような霧色
震えるだけの右手
ノートに描かれた空白を捜すのは
剥がれかけた、たった一枚のビラだけ。
草臥れたブルーフィルムを揺らすのは
唯、いつかの烈夏の陽炎だった。
蜃気楼のさざ波と醒めない白日夢
青は白いワンピースの少女を
曖昧な憂鬱に浸している――
食紅とラミネートに毒されて
造花の笑みは渇きゆくまま
紺の熱病は去りゆき
幽かに揺れる鉄塔は冷凍都市に暗鬱をもたらす。
赤い目と青白き指先
贄は正気を被った狂乱であること
誰の声も獣の唸りに聞こ
えること
聴こえないはずのサイレンが鳴り止ま
ない
こと――