冥海の月は細波に揺らぎ、夕刻に溺れる街に笑みを零す。
死を拐かす白磁
深みと残響を帯びた蒼は、少しずつ歪を増して、この世界を――
白日の鎌、田園に溺れる都市のテクスチャ
白磁の左手は未だ血管浮遊せず、
色の無い春を包むリバーブ
桜花の下に手首隠せば
這出ることすら叶わず
ひとひらふたひらと重なる
死者への手向けに着飾られてゆくだけ
……いつか炭化する夢を朽ちゆくままに視ながら。
千切れゆく肉塊は蒼に病をもたらし、☓月の夕刻に、過ぎ去ることなき錯覚を付与する。
彼方に視える、水々しい水彩だけが
此処が修羅の獄だと囁いてくれた。
――暁、ドライアイス燃ゆる街
影絵の赤信号に狂わせられし群衆に蹂躙されてゆく。
剥がれたスニーカーの底
剝がされた偽りの防壁
彼らはきっと
裸足の快楽に火傷の深度すら忘れて――