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haiirosan's diary

散文とか

温かいかき氷という矛盾

 世界の終わりが千鳥足で空に倒れ込んだかのように、街は群青色に染め上がっていた。夢うつつの状態である私は幽かに期待した。眩い太陽は姿をくらまし、街灯も鴉も戯れることなく沈黙している。毎朝聞こえる金属質な子供の悲鳴や、不快感に満ちた老人の呻きも今日は――テーブルに目を向ける。午前四時、終末を期待するには余りにも早く、そして二十四時間の内にある、夢のような静寂の時間だったに過ぎないという事実を、電子時計は無機質に刻んでいる。

「温かいかき氷って知ってる?」私の目の前に颯爽と現れた、名前は何となく分かるが国籍不詳年齢不詳住所不詳性別は多分女が唐突に言い出した。かき氷を温かくしたらそれはただの不味い水じゃないか、いや、でも私の大好きなブルーハワイ味のシロップ(そもそもブルーハワイ味って何だ)がかかっていたのだから、ブルーハワイ水だ。いやでもそれがメロン味だったらイチゴ味だったら、それともちょっと高級志向ぶって抹茶だったら、いや西洋モダン気どってコーヒーだったら…様々な想像をアタマの中で繰り返す度に、毒々しい青緑赤深緑褐色という色彩が繰返し繰返し網膜に映り込む。そうして5時間後、私の視界には五色に色づいた、大蛇のような太い線が歪にのたくる世界が映し出されていた。太い線はビルや自動車、逃げ惑う人間にまで巻き付き、それらを締めあげ、破壊していく。温かいかき氷、それは何らかの要因で命を得た様々な色のかき氷が元気に動き回っていることを指していたんだね!そう言うと目の前の女は「バーカ、ラリってんのかよ」と吐き捨て、私を軽蔑の眼で睨みつけていたので、私はバタフライナイフで女の頸動脈を切り裂き、彼女を屍に変えた。

 死亡して暫らく経過した死体は冷たいというけれど、殺したては温かい。氷は作りたては冷たいけれど、暫らく経つと温かみを帯びつつ溶けてゆく。私の夢もそろそろ溶けたのかな?――テーブルに目を向ける。午後二時、夢の終わりを期待するには余りにも遅く、そして二十四時間の内にある、退屈な現実に居なければならない時間だったという恐ろしい事実を、電子時計は無機質に刻んでいる。