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haiirosan's diary

散文とか

GO GOサムラゴウチvsヘンリー・ロリンズ その1

 此処はサンフランシスコ、フィナンシャル・ディストリクトやユニオン・スクエアを西海岸系スケーターが爽やかに駆け回り、住む人々の多くはフルハウスを観てのんびりと過ごしている。その一方で、ツインピークスからデヴィッド・リンチが兎の着ぐるみのまま気が違って飛び降りるかのような蟲惑と奸悪、そして狂気に満ちたビートジェネレーションの街という一面も持ち合わせている。氷の微笑に包まれたチャイナ・タウンの毒入り水煙草、めまいのするヘイト・アシュベリーの凍りついたサマー・オブ・ラブ。眩いネオンライトや喧騒とは裏腹に、何処か気だるそうで絶望すら感じさせる異国の街。そして虹色の夜が深くなる頃、ゴミだらけの街路に軒を連ねた、廃れた小さなナイトクラブやライブハウスで暴力的で粗野な演奏が阿鼻叫喚の如く繰り返される。

 天地神明に誓って日本を代表するハードコアパンク・アーチストである私ことGO GO サムラゴウチは、自らの作詞・作曲を知人のゴーストライターにほぼ一任していたことが内部告発によって発覚してしまい、ワイドショーや週刊誌のおかげ様で日本国内に非常に居づらい気分になってしまった。ツイッターなどという最新鋭の電子兵器によって、やれ餓鬼向けのバトル漫画の作者だの、やれホモビデオの男優だの、やれカイ・ハンセンだの、イングヴェイ・マルムスティーンなどと外見を比較されてネタにされ続けていれば、そりゃ記者会見で「は?」とも云いたくなる。とにかく、私が遥々このサンフランシスコの地にやってきたのは、アメリカン・ハードコアシーンではその名を聞いただけで失禁する者までいるとまで云われた漢、ヘンリー・ロリンズに私の作詞・作曲を依頼しようと考えたからだ。

 特に詞に関してはリスナーのみならず、あらゆる方面の関係者からも絶大な支持を受けているロリンズに作詞・作曲をやって貰えれば、日本で私に失望したアホな連中共も、あのロリンズに詞や曲を書かせた男として、ゴーストなぞいらない本物の天才だったと謳われるに違いないちげえねえ間違いないウエーイ!ワンチャンあるでこれ!!!あぁん?誰だ私がロリンズとナニしようがもうパンクスじゃねえ唯のペテン師だと呟く奴は!!!三年前から耳が聞こえだしたから、聞こえねえつもりで喋ってんだろうけど聞こえるんだよおおおおおおおおおおおおオオオオオオオオイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイエエエエエエエエエエエエ

「そこのジャップのテメエ!うるせえぞ!!今からギグを始めんだから黙っていろ。でねえとそのアタマをかち割るぞ!」

 ステージ上から私に向けられて、放送禁止用語がふんだんに盛り込まれた咆哮のような英語が浴びせられた。どうやら開演前でざわ…ざわ…ざわ…していたパンクスやスケーターのキッズの中でもひと際目立つ騒ぎ方を無意識にしていたようだ。

 ステージに目をやると、上手には長髪の不気味なギタリスト、下手にはまるで『タクシードライバー』の主人公のようなモヒカンをしたベーシスト、ドラムスは類人猿としか形容出来ないような毛むくじゃらの男がいる。そして、中央のマイクスタンドを握りしめる、スキンヘッドに異様な筋肉質な肉体、そして無数の刺青を彫り込まれた男が、ヘンリー・ロリンズその人であり、血走った目を滾らせ、私を今にも殺害せんというかのような、鬼神の如き雰囲気を漂わせていた(続く)