haiirosan's diary

散文とか

指先でなぞる、初夏の凍傷

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×××神が凍てついた蜜柑と虫食いの西瓜を分けて下さった、8月32日の夏休み。 渇ききったプールサイド、夢際の最期に、少年は群青色のビートバンと水底を何時までも凝視していた。

果たして終わりのないpermanent vacationには紅葉と老いた鴉が舞い散る季節はくるのかと、私は画面の向こうに映る、どら焼き中毒の青白い肥満体に問うてみるが、彼からの返事などあるはずもなく。
そう、一桁のゴールデンtimeの夢は此処で永遠と繰り返すから、昭和エレジーに浸水した夕暮れの公園で、齢70を越えた好好爺が紙芝居の陰鬱な物語に白目を剥きながら没入できるのだ。彼が語る一文字一文字は僕らの脳内で歪に繰り返し、あ、亜、痾、襾、鐚、ア、か、禍、窩、鹿、彁、ヵ、と刻む玉葱の涙ぐましい悲劇のようにループザループをしてゆく。
「きな粉飴は痩せ薬さ」それが口癖だった紙芝居狂いの彼は、成長した途端にスナッフ・ビデオの虜になってしまった。痩せぎすの彼が語るlast sceneは何時も同じでだって最終電車が車庫に収まるように、ビデオの中では血塗れの惨殺死体が物も云わず転がっているのだから。それを天界の収斂だと、画面がブラックホールに変わる刹那に叫びだすのだから、蚊にまみれた夏日の菜園は救いようが無い。
真夏日の今日、私は吐き気を無視して酒を煽っている。何故かって、例えば君が駅のホームから落ちても9割方は見て見ぬふりをする、そんな感じさ。