haiirosan's diary

散文とか

黄昏、青一号の海原

f:id:haiirosan:20180503182826j:plain

 

カーブミラーに映された「逃れることのできない死」は、夕暮の終わりと共にリセットされるはずだった。
道端に転がる凝固した血痕、

融解した肉塊、

塩の眼と海に傷口を、逆さまの祈りを、正体を喪っても尚ずっと__

路地裏の暗緑・透明な水

オフィーリアの叫び

あまりにも早すぎた埋葬……彼女の左手が幽かな救難信号を発していたことに、街の喧噪と光は気づくことができなかった。

降りしきる雨の連鎖と黙殺する__

車道に飛びだす乳母車すら、今や希望の暗喩だというのに。

摺り硝子のような空

暗寧のブランケットに火が放たれて

眠りを告げた太陽の揺りかご

空に湛えた青1号の海原で、姿見の滑空者が焼け墜ちて

__乾き往く死の水分、暗い暗い泡沫弾けて、細波は平静を再び取り戻すから。

海岸線、4F,刺殺体に花束を 転落死に祈りを?

「咲かない花もある」

青い春を永遠と繰り返す(彼)の最期は、より深い蒼を沈めて

朧ないつもの朝に、鳴り止むことのないサイレンを刻み込んだ

桜散らばるアスファルト

飛ばない鴉たちは夕暮れの傍観者のままで、

誰もが葡萄酒の葬列に堪えきれず

群衆は逆さまの十字架を背負い、紅色の砂漠を彷徨う

砂の無い(永遠)

救難信号を黙殺されし白昼

フィルムに収められた水死体の真実――
肥大化したレンズに無垢なる罅が一匙刻まれて、私は__

 

風鈴狂い咲く「夏」の呼吸に、

f:id:haiirosan:20171203111331j:plain

地獄のグラデーションと摂氏__に焼かれ、ペリエ翡翠は緩やかに変換されてしまった。
情熱という名の虚無に永遠と墜ちる夢、
徐々に錆びゆく階段の
13段目(だけ)が見つからずに這い回るのは――
――奇数の蜜柑に封入された青酸カリが滲みだし、5月は穏やかな死を迎えた。
(春)の名を忘却し、
誰もいなくなってしまった舞踏会に、
仮面

一つ、


と磊落してゆく

最期に灯されし淡い光
明滅する蒼白もいつか消えてしまうから
色を喪ったステンドグラスは唯無軌道な光を放つ
此処にはラストシーンへと向かう
渡り鳥の影すら無く、
熱病の季節へと向かう南風だけが
ふわりひらりと彷徨い歩いている。
_揺らぐ右
__嘲笑う左

逆さまの眼が蠢いて、
三面鏡に映る喀血の足音は止むこと無く
畳に刻まれた冤罪の痕跡
風鈴狂い咲く夏の呼吸を紫煙が凌辱すれば
朝日は茜色のままに地獄を彩る

f:id:haiirosan:20171129160122j:plain

揚羽蝶ノかごめかごめ

f:id:haiirosan:20171008181701j:plain

 

輪廻の夕刻は静かに反転し始め、少女の酸素不足は呪詛と共に火を放つ。

より深い赤に切り裂かれた睡りは、死者と化しても尚救いがたく浅く――

橋の彼方、未だに終わることの無い夕景に、彼は永延の(叫び)を止めることはなかった。

明滅するサイレンの雨、光は水死体となって、陰画の真実は酷く清廉さをましてゆく。未だ辿り着かぬ青い砂漠の深海に、アスファルトの隠蔽だけがほくそ笑んでいたから――

「死んだような街の夕刻、幽かな光を灯す水縹色すら、紫煙と暗濘に閉ざされてゆく」

換金された揚羽蝶は秋を絞殺して、

片羽の蝶

蛹のままの静脈

海辺の沈黙に墜落したいと願った。
錆びついた教会の鐘と休符の無い暁

裸足と零下、ヴェールのまま焼かれた人々は未だに砂漠の海を彷徨い、紅葉を捜し嘆きつづける

影絵に映る4層目の景色

パノラマは、奇数を殺したことを不起訴に処され笑って
彼方、隠滅された向日葵の残滓をかき集める蒼は、

有刺鉄線に注がれたリキュールに酔い痴れ、終わらぬ黄昏時を迎える。

f:id:haiirosan:20141230154010j:plain

林檎飴滲む夕暮、時報すら酩酊し、揚羽蝶の「かごめかごめ」が嘯き始めれば、血塗れの井戸の封が解かれてしまう。
這い上がる白い手の気配が、鴉の喉を切り裂いて

少女たちの赤いランドセルが、淫らにアスファルトに転がってゆく――

 

 

 

 

薙刀を解体する少女の眼

f:id:haiirosan:20191214121619j:plain

仄紅い水底には、秋の牢獄から脱獄した影が彷徨っていて、季節は亡骸と化した。
血塗れの刃先を寒風に晒したまま――
みえない朱を嘲笑うことすら、誰にも止められなく
「咳ヲ縊スルルハトホキ春ノユメ」
白痴の花が咲き踊り
薙刀を解体する少女の眼に蟻地獄宿る
無感動な警報と街灯は未だに揺らめきを繰り返すから、彼女は彼を即死させなければならなかった。
春の終わり、始まりの無い地図に隠された秘密と血痕。
天蓋花
茜色の円卓
薙刀に塗られた隠蔽の__
廻間の積み木遊びは蒼白さに呑み込まれ
瓦解してゆく人形たちの行方を見失ってしまった
氷結した太陽、閉ざされた窓、炭化したカーテン
鴉すら視力を亡くし、砕け散った老眼鏡と硝子の歩道から墜落してゆく左手を、誰が救えるというのか?
水槽に投げ込まれた奇数の皿に、長襦袢の朱はより深く、藍色で水色を隠蔽すれば障子の彼方はまた止まない廻廊だということを。
どうして?
どうして、井戸に破棄した青い簪が未だに天井を彷徨っているのか?
疑問符を焼却しないと、夜の帳が開く夢すら見られない。

ブルーキュラソーのグラデーション

f:id:haiirosan:20190811142416j:plain

紫陽花溶けた朝焼けに、少年の爪先は幽かな亡霊と怨嗟に剥がされてしまった。
だが、遠い警笛を糾弾する185694の使い魔の醜き悪意に、胃からの出血止まぬ少女が手に取ったレミントン・ショットガン。
3番目のトイレに投げ込まれたヒ素の色で観音開きの入口を塗れば、きっと深く潜れたはずなのに。
揺らぐ硝子の水面にミントリキュール注がれ
人々は清涼な沈黙を選び取る
足音を掻き消すザザ降り雨と青ざめた太陽
傍聴席の無音を目隠しの断頭台が引き裂いて
柔らかな朱の香りが翡翠を蹂躙してゆくから__
ブルーキュラソーのグラデーション
ホットケーキ融解して
殺人の色彩すら隠匿される夜が始まってしまう。
歩みを進める蟻の群れの肌も、艶やかさを湛えて、砂糖菓子の歩道橋が崩れ消えてゆく足下すら、何ひとつ気づきもせず――
暁の神経系、朝靄、彼方の茜色
千切れゆく淡い鳥たちの羽根が、
藍色の彼岸花を枯らしてしまう。
5/3
赤い眼をして立ち尽くす暗いレインコートは
雨があがったことも忘れて――
奇数廻る季節に、素数が救済されることは無いから

C18Fe7N18±C16H10N2O2

f:id:haiirosan:20200510202202j:plain

私だけが取り残された砂漠の果て。
炭化した夕日のシャーベット渇いて、蛇が高速道路を這い回ることをオアシス・アイスの色素が描く。
意味を成さない言葉の配列に、地獄の化学式はそれでも毒を織るために、
――鷺は風切り羽すら亡くしたまま
歩みをやめた葬列から飛び立っていった。

「涅槃 プールの底 赤い靴
羽根を無くした蝉の群れを視ている
終末の夏休み 移ろう海辺
水羊羹の変色
8月32日 終わりのはじまり」

夏と硝子の災禍、太陽への賛歌を放棄したのは? 
朽ち果てた信仰、マリアと病室の遺体
遺棄死体にしか生息しない果物みたいな虫の正体、砂のジェンガを繰り返して
手繰り寄せたゲームセットすら、夢見る機械みたい
そう、金網からはぐれた有機体が、視えざるアルファベットを嘆く。
遠く、遠くで放たれた心臓に鼓動は無く
暗い眼をした豚の皿がナイフに錆を滲ませて
心不全のワイングラスにアスピリンを捧げた。
酩酊、心拍数の零下、
眠りには果てがないから
桜には涯てがないから
私はずっと遺骨で拵えた飴を舐めていた。
祭屋台にツルハシ刺さり
簪むくろと金魚鉢、水が腐る
花びらの下は殺しと縊死を浄化する
そう云った猫は波止場の夕刻にそっと消え、
潮騒が沈黙を永延と奏ではじめた。

丑三つ時に寄生する薔薇が色を喪う夢

f:id:haiirosan:20200503205751j:plain

チョークで象る死の証明。
彼方で轟く雷鳴を黙殺するかのように、
無言の炎が彼女のドレスのような懺悔を焼き尽くすかに見えた。
灰色の壁から一歩を踏みだした、
その笑顔は酷く歪んだままで
錆びついたナイフが浄化されてしまう音だけが
青い世界に鳴り響く。
磨り硝子に匿名の死と血
丑三つ時に寄生する薔薇が色を喪う夢
夕陽のシャーベット溶けて
彼らの水色の虚偽は裁かれることなく
通続音みたいな四月を迎えてしまった。
――そうして暗い影を濃くしてゆく君は
、一体何処へ歩みを
(奇数のWWW,)
或いは__
無機質なロンギヌスの槍が降り注ぐまでもなく
世界は脆くも瓦解してゆく
空は未だに水色を保ったまま


ちはワイングラスから
健やかに飛び立ってゆくけれど
彼らは審判に無言を貫き通していた
琥珀色の季節は瞬く間に楼閣を編み出し
彼或いは彼女の縊死を求愛する。

夕刻に靴ずれの痕血が滲み路地裏の鬼赤い靴の記憶

ねえ、手招きをする鬼の跫音がキこえる?
握り潰された柑橘類のイロ__色が空を犯す
まるで私の目が罪だと宣告されたかのように
流れゆくカナリアの激突は終末の調べ
蜜柑畑に血を零すことに躊躇いもなく、
君はフェイドアウトを選ぶ。

f:id:haiirosan:20200503210140j:plain