haiirosan's diary

散文とか

太陽がマンホールに変換され、カステラ笑う

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溶けゆくカステラ、琥珀砂糖のエレジー。
皿上の輪廻に机上のノートは気が触れて、君が持つティーカップの痙攣も永遠に収まらない。
紅茶に揺れるカモミール、ライムピールが孤島に追放されたことすら忘れて。
虚偽のフレーバー、クレーマーの腐乱死体、フランス上空から零れ落ちたマーマレード、収拾のつかない三時のおやつ。文明開化に散切り頭がすき焼き鍋に溺死すれば、浮き上がるのは火車のごとき車麩の水死体だった。
そこで文明堂は独房で挙手して、こう言い放った。「お菓子よりもニッパーを持っていきたいのですが」と。
これには豪雨もしゃっくりが止まらない。降水確率百パーセントの三連単、ここで切り裂きジャックを解き放てば、君の絵筆が刻んだ茜も、君のナイフが描いた動脈血も、全ては濁った水に流されてゆくはずさ。そう、何事も無かったかのように狂った朝日が昇るように。鉛の塊が時と時々人を切り裂くように。

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しかし、私の記憶を辿れば、どうやら迷宮入りになってしまったのは私たちの心のようだった。
顔のない生者の行進、右手右足上がる左手左足の行方は。「僕の私のカステラを返せ!」と嘆く様を滑稽に真似れば、私は午前6時のマンホールに首を飛ばされてしまう。ギロチンも絞首刑も忘れた健忘症の街で。
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