haiirosan's diary

散文とか

透明な本に刻まれた改行

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屍夏の太陽の下
十字架すら砂塵へと帰して
青はより鮮明になってゆく
彷徨うコンクリート・ジャングル
火葬に付されても尚、血を滴らせる人々が
最後のソーダ水を拭き零してしまう
……琥珀の波が黄昏時を洗っていた。
「無言の静寂」
柔らかなブランケットが覆えば、
横たわるダガーナイフすら、
隠し通せるから、と。
――気の触れた鉄塔から
間断なく流れる警報に
世界は未だに心拍数を乱れ打つ
救済の無い罪と雨に濡れた太陽
水鏡に映る亡霊たちは
幽かな跫音すら、黙認したまま
__伸ばされた手、或いは突き放された手
徐々に浸透する鈍色に
その表情はより深い匿名性を帯びて__
透明な本に刻まれた改行は
雲路に抱擁された凍死体のように蒼く、
いつまでも淡い揺らぎを湛えていた。

モノトーンの季節、水の中の薙刀

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業火の青、火傷に彩られた夏緑
火刑に陥った水面は、未だに翡翠色を保ったまま
左手の釘だけが、眩いほどに鮮やかで――
――宵闇に彼岸花咲き誇り
幸福な副流煙は、酩酊に浸された如月を柔らかに抱擁した__
0.5
0.3
0.1
0.
記憶に収斂されし、鮮烈な水彩画、
木枯らしに滅び去った世界に
幽かな奇数の照光が射し込む。
枯葉、或いは朽ち果てた亡骸に
手向ける造花の花束を求め、彷徨う巡礼者にとって、その光はあまりにも鋭く__
小豆色の入水、水の中の薙刀
それらは滑らかな愛撫と死を刻み、
刻刻と浮游せり鯉は
啄む静脈血を離すことができなかった。
肥大化する喜劇=悲劇を模写したはずの
(彼女)の左手は不規則に震え続けて……
モノトーンを選択してしまった季節に、
空白と暗譜すら忘却した。
車道、昏睡に浸る ルンペンの足跡
口紅と血痕、逆行する手紙
――描かれた極彩色の煉獄すら
モノクロだというのに

忘却の月、救済の糸

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婉曲する剃刀が、夕暮れの肌を切り裂く。
幽かな翡翠色の希望すら、
麻酔もなく轢断されて__
304号室に遺された、空白の浴槽に溺れた脾臓。 
無表情に突き刺さる画鋲が
そっと笑みを浮かべた時、
遺影から拭い去れない血が流れだす。
氷結した彼岸花の断末魔に、
埋葬された「か つての 希  望」が
微かに呼応する。
再び忍び寄る、鋭利な影。
止むことの無いサイレンから、
そっと逃れる鴉の群れ。
やがて、深紅が死体を隠すとき、 
誰もが鉈を振り翳した。
影絵散りばめられし蒼白
遊泳する幽かな炭酸が爆ぜて、
灰色の地上は瞬く間に火の海と化す。
業火の渦中、水を求め、
或いは
(救済の糸)を求める人々が灰燼へと帰してゆく。
アマレット融解して、夕凪は瞬く間に酩酊する。
獄焰咲きほこる神無月、
睡魔に犯された「忘却の月」に__
静かなコンバースに、あまりにも穏やかな穴が空く

ダガーナイフの寝室

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うつらうつらと死の午睡

ゆらりゆらトうたたね ヲ ……

解体された毛布

丸まったままのブランケット

横たわるセダン、揺らめくままの蜃気楼

薔薇色の黄昏に焦土の嘆き――
――鳴らない目覚まし時計、屍の敗血。
暗幕に閉ざされた部屋、
暗渠に浸されたベッドには、

確かにダガーナイフを携えた、「彼」が佇んでいたような気がして――

蒼白のワルツに暗幕が被さり、世界は瞬く間に不協和音に浸されてゆく。

「__________」

雨、 不可視の雨が革靴を水没させ、誰かのハイヒールを切断した。
__血も流すことなく、最期に笑っていたのは、無垢な黒猫と裸足の少女だけだった。

反転するはずもない三面鏡に、奇数の茜色は滑らかに消失してしまう。
切り刻まれた畳の下、
垣間見の「名も無き死者の薬指」
罪なき白磁の骸すら、黄昏は不穏に染め上げ、唯、沈黙だけが其処に――

私にだけ聴こえる「紅色のサイレン」反芻する音色の水彩画、
或いは拭えぬ死と、気の触れた__
ニライカナイの夢うつつに、いつまでも浸る? 
――壊れてしまった夕暮れは、瞬く間に消失してゆくのに。

水色の夏色、鬼灯色と遺灰色

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夏の造花が咲かない花火を想い、嗤う――

鮮明に映された網膜のオアシス
不可視の砂塵に喉を引き裂かれ、
街はアルファベットの影に怯え。
跫音、跫音が足跡も無く忍び寄ル__
心臓零れ落ちる旋律、
施錠の無い出血に、暗いドアが緩やかに開かれた。
転がる空き瓶
打擲されし薬瓶
青磁色の薬水、夕暮れに染まる街から乖離して――彼方に唸る、炭化した雲に救済を与えることもなく、その色が剥離するまで、傍観者でいた。
「水色の街、夏色」
火焔の波紋で炭化した魚が、間断なく降り注ぐ。
海の無い街にもたらされた猟奇の跡
__或いは狂気のパノラマ。
全ての波が過ぎ去った時、其処にあるのは無機質な熱砂だけだった。
……此処は緑獄の鬼灯、揺れて揺れてゆれてゆれる
草花、或いはありがちな終末論を踏みにじる南京猫は、「逆行する針時計」を愛でていた。
全てが収斂の灼熱に覆われる時、遺された匿名のセダンとブランケットは凍りついたままで__
再び錆びついた時計が、途方も無い熱病に揺るがされて唸る。
輪廻する針時計
さだかならぬ夕刻の水彩に、音韻と炎を焼べるのは、いつも夜に震える鴉だった。
__誰もが飛び去った後、遺失物は緩やかに身を焦がし、やがて朽ち果ててゆく。

青1号沈澱せり世界

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ライムミント滲む夕刻
光の無い街灯は酩酊を惨殺し
暗澹たる点滅を繰り返す。
小豆色の被膜に甘味料を加えんとした、かつての「地図に無い王国」は、堕落のリキュールに溺れ、徐々に消えゆく薄荷色を傍観しているだけだった。
浴槽に沈む街頭スクリーン
透き通るのはいつも、拭えぬ罪の痕だけ__
硝子都市 
うつるうつつに
手を振れば
死相の笑みが
虚ろに浮かぶ

水溶性の積乱雲は、文月を暗渠に封じ込めている。
砕け散った西瓜を誤認した制服が手にした、
赤いロープ、
未だ見つからないプールサイドのスニーカー。
――聞こえない水音の旋律
琥珀色に唸る屛風は、終わらない黄昏時を描く。
そこに描かれた、夕刻に浮游する亡霊たちは、暗転を待ち焦がれる「終幕の少女」のように淑やかだった。
青1号沈澱せり世界、佇むサイレンは孤独を嘆くことも無く、ただ(其処)にいた。未だ太陽の救済が訪れない場所、青雲の沈黙が時計の針を穏やかに狂わせる。

「四四番目の空白」と蒼穹の破傷風

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暗濘の彼方、
流砂のような火炎が、全てを焼き尽くしていた。
傍観或いは感傷
(それら)に浸る誰もが
既に火葬場の暗闇深くに沈められ__
刹那に映る炭化した彼らは
暗幕の小さな悲劇にすらなれなかった。
視えない鬼が手招きする黄泉比良坂。
言葉も無く
表情も無く
醜き亡骸の啜り泣く声だけが反響して……
微睡み、溺れゆく私の左手を摑むのは
「わたし」だった。
「わたし」の名前
「    」
「     」の悲劇的な絵筆
削ぎ落とした「彼」の右耳は、蒼穹の陰画に救済措置の無い(春)をもたらしてしまう。
左手、
最期の銃声すら、
小麦色の柔らかさに吸い込まれて、
冷たくなってゆく体を
季節が置き去りにしたから。
1998年、或る群青たちのフィルム
__永遠の欠席を保持してしまった太陽は
「四四番目の空白」に位置づけられた。
光、清廉さを喪った(青たち)は
灰色のローブを纏い、暗き雨音と踊り続けている。
綿飴すら氷結する烈夏、
街は、
人々は名前すら喪い、
視えない数値に血と汗を零してゆく。
――やがて、全てが納棺され、氷砂糖の雨と柔らかな陽光が、空白の大地に降りそそいだ。
紅葉の流沙が破傷風をもたらし
蝉は再び警笛を吹き鳴らす。
凍死と熱病が混濁する煉獄の絵画に、
彼らは醜きパノラマを刻み込もうとした。
__今、蠢くのは「無」に浸された
あまりにも潔癖なモノクロだけ――