haiirosan's diary

散文とか

罅割れた花瓶の花火

泡沫を描く造花は熱の無い花火を繰返す。

罅割れた花瓶のような世界、枯れ果てた憂鬱なる季節の夢中夢
空白のフィルムに奇数を流し込んで、モノクロームの現像室に一匙の殺意と焰を――

左85°の黒い手袋に隠れ潜む、ライターとダガーナイフ。
――やがてチャイムの音が鳴り響けば、世界を蹂躙していた醜き靴跡は、抗うことなく燃え尽きてゆくから。
「炭化した終末を歩く二人の背景は永続的な冬」
……冬椿傍観する街並みは苛烈なる炭素に浸されて、渇ききった蒼い砂場に埋まる人差し指は、純粋なる正義を糾弾した過去すら忘却してしまった。
化学式の空、花弁がひとひらの雪と散る度に、罪の灰に塗れた世界は淫らなイロを湛えてゆく。
終わりはあまりにも朧げで

境界の指針を浸す靑1号が、記憶のかき氷を融解する。
網膜を震わすシロップの艶、鼓膜を脅かす福音に、夏は唯、その心臓を掻きむしり続ける。