haiirosan's diary

散文とか

Borderline Marmalade

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薬莢みたいに空っぽな1999年、夕暮れのような朝に僕らは有刺鉄線を一心不乱に掴んでいた。冷たい手、冷たいコード、冷めきった未来を赤い血が否定してくれるから、醒めきった今を僕らは嘘だと否定できるから!首のない人形に充たされたクレーンゲームゲームセンターの端でワンコインの首吊りすら叶わず7階建てのデパートが瓦解する刹那に僕の網膜を包んだ橙色だけが唯美しくて、僕はマルボロキャスターメンソールの吸殻に哀悼の意を込めたけれど匿名のランドクルーザーとオートメーションのコルベットは容赦なく若き日々を蹴散らしてゆく。

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境界線上で空虚と無垢なまま漂い、君は洗濯機に漂白剤をいれ忘れたと永遠に嘆くからさ、君は雨にうたれたまま琥珀色の彼方の夕景を愛撫していた。もう円転しない針時計もう清浄さを忘れてしまったコインランドリーに1989以降の銀貨を注ぎ込むことも忘れてしまって。カールス瓶麦酒の涙、チェスター猟銃の一次試験、リトマス紙は未だ変わらず、二次試験に合格したのは空っぽになった剥製の僕らだったことは映画館の床上に墜落したポップコーンしか知らない。

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マーマレードの夕暮れに浸されたパンが、フレンチトーストになれないってことにいつの間にか気づいていたのに。

赫と蒼が収斂して、僕らは散りゆくだけ

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ステンドグラスが砕け散る刹那、教会の鐘は無慈悲を刻み、あまりにも眩し過ぎる光が僕らを焦がす。
フリージアカラーの空を漂うアークバードの獄炎、ブルーバード去った街に、鉛色のサイレンが鳴り響く。
散らばる色、散らばる光、散らばる――
散りゆく羽、散りゆく夢、散りゆく僕ら。
いつかの海岸線、少女の麦わら帽子はブックカバーと共に溺死して、少年のサンダルは砂塵に抱かれて喪われてしまった。ひび割れたビー玉の記憶、紅葉が枯れゆくような、儚い記憶。

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――1989年、裸足のままのクリスマスに観た『汚れた血
スクリーンの前に座る少女は赤い靴を履いたまま、決してそれを脱ごうとしなかった。血だまりがカーペットを覆っても、サンタクロースの首がガードレールに切断されても尚。
17歳のまま死にたいと嘆く彼女の瞳孔には蒼いソナチネが永遠と流れていた。白と黒を揺らす旋律、何処か諦観したかのような、渇ききった涙。
赤ワインを零す天使が彼らに救済を与えることは無く、僕らは傍観者として水の中のナイフを握っている。メランコリーの行方不明、青いままに刻んだいつかの6すら色褪せてさ。

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過ぎし冬を弔えば、僕らは――

夕暮れのエンドロール

https://youtu.be/sq0OvoDvWK4

夕暮れに青が変色する
時計は9時のまま茜色
唸るサイレン
夢見る機械

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空は燃えあがっているけど
街は凍てついた灰色のまま
救いも報いも無い日々
長すぎるロードムービー

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赤く揺れるカラス
孤独なスカート墜落して
無言の鉄塔
世界を傍観している
白い葬列
心を柩に閉じこめて

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全ては闇に隠れ、やがてエンドロールが始まる

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4の部屋で膝を抱える私は、

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四の無い夕暮れ、チョークが刻む排水溝の猟奇死体にマリアと犬はキスをする夢を見たい。
首を吊ったままのマリア、
僕らは君も彼もこわいから
君らは僕も彼女もこわいから
みんなこわいから
僕はソーダポップとワルツを踊る
いつか、いつの間にか消える泡沫
テーブルに並べられたウォッカの円卓で
セザンヌの殺人、彼の群青色の二の腕に欲情する夢

ジェーン・グレイの白磁の目隠しに見とれる夢を
ナイフが刻む記憶、血に染まる藁に誰が、卒倒する儀礼に反則を与えるのは私ではないワタシ

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そう、怖いから君が切り裂く刹那を観れなかったよ。バドワイザーの出血、誕生日に解雇、安吾の百年、ドリッパー・といわすはてきか
孤独を蹴散らしたければアタマの中の蝋燭に火を、可愛い君がマッチを儚く擦れば、綺麗な貴女はきっと俺を殺してくれる。
使徒の絵画、砂漠のオアシスを求める海には、半径50メートルが、翡翠たにてしろろちめ カサブランカ日露戦争と水羊羹の死
フレーバー・アップル
ドラウナーズ・アニマル
「ギロチン発明前の斬首は失敗が多く、だからナイフで――」
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クレーマーが一度だけ鳴らすサイレン
僕はその近くで観たけれど、スーラー湯麺700円
、僕は剥離していたのか
僕は街頭ポップ越しに問いかけたが、渋谷のアブストラクトキャンベ内のDISCWO,FuGCE 面はもう変っちまって死んでいっ

1209

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時計狂って、町は傍観
多分夕暮れが蒼く染まる。
赤、朱、茜色
哀を愛と誤り
藍と青の境界
夕景が蒼いのは世界の終わりの知らせ。
屋上でそう云った二人が墜ちる刹那は新聞38面に収まる
1面にリーグ優勝
39面にパンデミックの知らせ
救いのない報道 救いようのない人生
牛の眠りを忘れれば
前も後もなくして横転事故
這い出るのは人か炎か
体温が凍結した僕らは熱を求めて。
壊れた柱時計の針に絡みつく仮名の髪
SNSそれともSOS
匿名の叫びに救急車は来ない
クランベリーの潰れた道
柘榴が乱れた街
赤に茜が重なり、ガキは餓鬼に変換される下校時刻
狂ってもいない電波に喚く
狂っている制服と自転車
群れる羊 血塗れの牧場
餌にフレア 気の触れたエクレア
ほら皆17歳で消費期限切れだ
チョコレートは夏も冬も狂いがち
溶けて 白く凝固して
ビターもミルクも意味を無くして
君の指先は虚無に溺れる

麦酒の表面 ジンの裏面
ピンポン跳ねる人生のラリー
パーマを失敗した琥珀色の彼女
透明人間の狂った彼
ねぇ、君がナイフを持っているか否かを唐突に問えばAlc.は40を越えるから病院に行かなくちゃ。
無職に職質 無言の遺言
手向ける花は造花のみで
親族の飲み会で気まずいのは私だけ
開店前から満席の酒場、少女が無邪気に頼む鴉の目玉、少年の悪戯で割れるステンドグラス、刻まれる色彩に見惚れていたら、いつの間にか色を喪っていた。
それが悲劇か或は喜劇か。
問う君を硝子越しに凝視する鴉の群れと暗い黒い太陽

反転する蒼に運動会は死体しかない

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蒼に殉ずる季節の残り香、ベッドの下の彼或いは彼女が残した包丁にへばりつく埃、グラスに残されたままのビールの老い
テーブルに突き刺さったアーミーナイフが喚く朝
テーブルクロスだけを丁寧に焦がす朝
フレンチトーストで形成された自殺の名所
フレンチ・キスで映る暗い日曜日のワンシーン
僕らは忘れてしまう、記憶も夢も何もかも。
僕らは失ってしまう、色と言葉と心を
ドロップが溶けたことに、錠剤が液状化したことにも気づけない私が、雨に濡れる淑女の靴から目を逸らすことが出来るだろうか。
葬列の背後、仮面の四つ足、引き摺られる凧。
今は1月じゃないから今は1月じゃないから今は1月じゃないから、そう呟き続ける少女は青い目のタキシードと共に失踪者扱いだ。

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ねえ、けれどどうして、パンではなく人が首を吊っているのかな。
僕は僕に問いかけるけれど、駐車場で少女達が殴打していたのは西瓜が8個とメロンが二個だった。
ジュークボックスに空いたS&Wの弾痕、juiceboxを刻むギタリストのコンバース、ジュースミキサーに肉を投げ込む背徳感よ。
空が藍から愛を奪取し、今日も何処かでミサイルの応酬が繰り広げられる。
飛行機雲も刹那に消えて、僕はナイフとフォークでしか食事をしたことがないから。ああ、柱時計が左回りに、雲が左に流れているから!エルパソの太陽が沈まないから!淫らな死の運命からは逃げられないから!
そう叫び続けた白昼、遠くのサイレンがすこしばかり近くなったような気がした。

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太陽がマンホールに変換され、カステラ笑う

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溶けゆくカステラ、琥珀砂糖のエレジー。
皿上の輪廻に机上のノートは気が触れて、君が持つティーカップの痙攣も永遠に収まらない。
紅茶に揺れるカモミール、ライムピールが孤島に追放されたことすら忘れて。
虚偽のフレーバー、クレーマーの腐乱死体、フランス上空から零れ落ちたマーマレード、収拾のつかない三時のおやつ。文明開化に散切り頭がすき焼き鍋に溺死すれば、浮き上がるのは火車のごとき車麩の水死体だった。
そこで文明堂は独房で挙手して、こう言い放った。「お菓子よりもニッパーを持っていきたいのですが」と。
これには豪雨もしゃっくりが止まらない。降水確率百パーセントの三連単、ここで切り裂きジャックを解き放てば、君の絵筆が刻んだ茜も、君のナイフが描いた動脈血も、全ては濁った水に流されてゆくはずさ。そう、何事も無かったかのように狂った朝日が昇るように。鉛の塊が時と時々人を切り裂くように。

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しかし、私の記憶を辿れば、どうやら迷宮入りになってしまったのは私たちの心のようだった。
顔のない生者の行進、右手右足上がる左手左足の行方は。「僕の私のカステラを返せ!」と嘆く様を滑稽に真似れば、私は午前6時のマンホールに首を飛ばされてしまう。ギロチンも絞首刑も忘れた健忘症の街で。
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