haiirosan's diary

散文とか

Floating Blueberry Valentine

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13th Friday,殺戮と水没のラストシーンから逃れたならば、僕或いは君は血濡れたヴァレンタイン・デイを迎える。

嘘寒い二月の路上、畸形の街路樹から暴行を受けたブルーベリーの木は慎ましく、だがしとやかにその実を育んでいた。紫の狼炎、虚しくも拡がる無機質なクランベリーへの嫉妬。

ダンスを踊る、明滅するCLUB SPOT,羽の生えた彼女を照らすライトは否が応にも紫で、まさか初老のDJがDEEP PURPLEを垂れ流すとは、視界の渦、渦の記憶、高校・街頭・冒頭の猥雑さはいつか観た地下街のシネマ、野良猫の祈り、野良犬の居眠り、登校に轢かれる僕の下半身、アーミングをする君が僕をセーラー服の君らが僕を傍観者として視姦するような夢のような現実に暑中見舞いは溶けるような水羊羹とヴァニラ・アイスクリームだったような。

そう云えば、クランベリーのメランコリー、ええ、彼女或いは彼らは結局錆びた空気のトランキライザーで窒息死したように見せかけ、内実は人々の心を喰らう文字通りの「怪物」と成り果てていたの。勿論外見上は憐れに朽ち果てた枯れ木のmelancholiaなのだけれど。

土留色、幼く麗しき少年少女が一度は喰らう禁断の果実。僕は其れを何としても阻止しようと、まさしく偏執狂の如くPianoを叩き鳴らした。雑、調律されているのにどうしてって、賢い君は土の下で嗤っていた。けれど、土の上にまだいる彼らは土の下の君の靴先を凝視しながら、それをよりによって楽しみにし、ましてや僕が殺す程に憎む肥え太った「大人」が合間合間に摘むピスタチオや国産ビールのように、彼ら子供達がどどめを躊躇い無く食すことを止められもしなかった。

桑の実を喰らう、ランドセルからミミックが飛び出すような、赤い靴に異人さんが誘いこまれる様な。泡の様な轟音、藍色の呻き、青色の終わり、生爪が剥げゆく僕の乱雑な連弾からは様々な誇大妄想と被害妄想が! 嗚呼、ベランダの外、熟れたNepenthaceaeとハエトリソウの白昼夢の不倫を、この破傷風が怖い指先では止めることが出来ない!

腸チフス、電波で垂れ流される伝記に、僕は涙する。感受性はアルコールが作用して、ソナタを弾き辞めた頃に見渡す夕暮の下、少年少女が悶え苦しむ姿を見ると僕はどうしても差し入れられたブルーベリーと血汚齢糖を彼らに恵みたくなる、だって彼らの汚れた血は劇画の中でその頬にへばり付かせなくても、僕のこの濁りきった眼には映るもの。甘く甘く刹那の切なさに、チャーリーのように君はステッキごと沈んでいるように、新宿三丁目の路上でよろめく朝のように、僕の虚ろの眼には映る。

噫、仏国へ往きたい。数百人が投身自殺をしているLa tour Eiffelに、君も運命を共にするかい? そう呟く夜に自己嫌悪した君と僕は白い手首に剃刀をあてた。