haiirosan's diary

散文とか

蜜柑と夕暮れ 

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冬の生命線 こたつにミカン

いつかの暖かさは橙の夕暮れの如く 

何時かの甘さは若く儚く

記憶の電源が切から入へ――

――想い出の蜜柑 ざらついた肌と艶やかな色

内に秘めたその瑞々しさは さらされても露わにはならず

内に潜むその温度は 世間の冷淡に浸ることもなく

世界を問わず 場所を問わず 物も言わず

 

ある日の夕暮れ 橙色が街を埋め尽くす

誰もが皆 蜜柑に埋もれ 蜜柑に溺れる

時折実をさらけ出す 幾千万の内の幾つか

たやすく轢死体 或いは 変死体と化す果実

その血液と肉片が 橙色の風景を より深く染め上げる

混乱する街 子供は喝采 大人は狼狽

咲き乱れる道 燃えているのは夕日か蜜柑か

オレンジに冤罪 柑橘類の喜劇と悲劇

 

やがて夕景と蜜柑は終わりを告げ

若さも儚さも缶詰に加工されてしまった