絶夏の花火を夢みた花束は
外科室のような世界で醒めない夢と
冷めきったゆめうつつを彷徨い
霊安室と暁の扉を静かにノックしたんだ
死に覆われた、凍結せし桜花の冬
凍てついた笑みを零せば、氷柱なりし季節の骸
――透きとおるままに融解すれば
其処には誰もいない水色の風景が拡がっているから……
迷宮のようなクーラーボックス
熱病と春に酔い痴れて 烏揚羽纏わりつく花のふり
青い炎に焦がされたまま
咲き誇り滴る蜜はヒ素の色
蛍火うつろう雨脚切り裂く宵の音
明滅を輪廻する幻影或いは実存
光散りゆく夏の記憶は無く――
私は唯、アスファルトの感情を
ひた奔る情念に焦がされる夢をみていた。
灰色の水槽 黄昏屛風に踊る金魚も
いつかは呼吸を喪ってしまう
濾過なき水と藍ざめた心臓から零れる
素毒の着色料が夕刻を宵へと変換させて……