haiirosan's diary

散文とか

ピーナッツバター、誰が鐘を鳴らす

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甘く甘く世界は雨足に脚気を覚える。
私は毎夜深夜或いは朝明け4無いし5に脹ら脛の痛みを覚えるんだ。
そう、ベーコンエッグのダンクシュート、コンビニに横たわる赤マルの死骸、フライパンで煮込まれることの業。
映写機が映し出すのはいつもハッピーエンドとは限らない。映写機が映し出すのはいつもEnとは限らないと口に溢しそうになるけれど、嗚呼、それがアンコールかエンドロールか貴女が狂う前に画いた絵しか解らないだろう。

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青を殺す藍、君のことが気になるから私は花屋で竜舌蘭を愛でているけれど、私の中のホントのワタシは花の名も君の名も忘れてしまっているんだ。
ブルーバード、青い花、青い春、向日葵狂った夏、遠く、遥か遠くの鳥

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ピーナッツバターの偽装
ピーナッツバターをビーツに
ピーナッツバターをガターに
ピーナッツバターをドーナッツに
ピーナッツバターをカシューナッツ
茜色 殻を脱がされた6
世界の終わり 正解のない逢魔の時
そして夕暮れに煎られたバターはマーガリンへと
それで夕焼けに抱かれた私は何処へ行けばいいの?

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Parallel Crawl

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ビー玉が眼球に変換される時、私は世界からの視覚を喪った。
水を漂うミズ、空を這うソラ
私を見る彼らはレンズ越しのショーケースの中。値札の無いマネキンからは赤い血が流れている。
だが、走る重軽傷者を差別するなというデモは私の死体を引き摺り、生き証人ならぬ死証人として曝す。白日の死の商人、落日のシャウエンの色は?

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スクリーンの中は僕らの死体に満ちている。
隠すため、隠すために僕らは針葉樹林で麺硬めを頼むが、其処に空腹の落とし穴があることにクレイモアは気づいていない。
鳥居は揺れる、金魚が浮かぶ、うかばれない生活。
死生観、焼かない肉、切らない野菜、鱈の中の鱈
私は何の話をしているか忘れてしまった。
夕暮れの茜に切り刻まれた、机のない教室。花が散る刹那は季節がもう春を迎えたことを告げる。
春に散る花、此処がどこなのか私には行方不明であるが、彼らにとっても行方不明であるのだろうか。

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永遠の球体は死すら無かったことにしているような

モノクロ、碧、黒マントの縊死体

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三輪車に激突した朝、空中戦に墜落した麻畑で私は狂う。
ビートにピート、ディス・ヒート。トーチカ貫く水兵の三半規管、フィッシュ&チップスにくるまれた新聞紙の猟奇殺人記事或は夢の夢の夢を重ねたミルクレープの皮膚炎。

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――それは潮騒の残酷な記憶、繰り返す波の白と蒼、見上げた空は汚れのない青に満ちていて、その中を滑空していたカモメの群れが海上のテトラポットに目がけて沈んでいく。或る日曜日の昼下がり、そんな海の情景を少女は唯凝視しているだけだった。裸足に絡みつく柔らかな砂と蟹の鋏、不意に静寂を切り裂く汽笛やサイレンの音すら、少女の視線を逸らすことは出来ない。「私は明日が怖い。逃れようのない現実に切り刻まれる感覚がするの。孤独、無力、疎外感、絶望、あらゆる負の感情が私の身体に覆いかぶさってくる気がして。此処で海の音や空気を感じていることは抜け殻のような私の身体と心にかろうじて生を吹き込んでくれているから」彼女は社会、いや現実世界そのものから疎外されてしまっているかのような印象だった。明日行く所は?友人は?恋人は?家族は?そもそも私自身の名前は?答えられるはずの問いかけすら答えられない、何も無い空っぽな虚無な存在なのとさらに呟き、呻き声と共に足元の砂のキャンバスに大粒の紅い涙を垂らしていた。

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――時は経ち、何となくやり過ごせた気分に浸る日々、今日も正常だった幸せだったと皮肉めいた台詞を吐く余裕すらすでになく、幾多の地獄の季節は健忘していく記憶と共に瞬く間に過ぎ去って行くが、どうしても少女と居た海辺の記憶を忘れ去ることは出来なかった。あの日、何時の間にか茜色に染まりゆく空と海岸線、うねりを増しあらゆる物を呑みこもうとしているかのような波、穏やかな午後は彼女の涙と共に息苦しい程の不穏と不安に満ちて、振り向いた彼女の瞳は白が黒に塗りつぶされ、その瞳からはどす黒い涙が延々と流れ続けていた。そして、裂けた口元からは酷く歪んだ、だが何処か哀しげな笑い声が響き渡っていた。 生々しい不協和音と沈みゆく日曜日、彼は狂った海を凝視することしか出来なかった。

平行世界の夏は冬

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――八月の朝、夏の熱気に浸された身体に、降りしきる不可思議が沁みる。

 冷たく染まった道を歩く人々はアロハシャツ、水玉模様のワンピース、足元はスノーブーツと思しき人も多い。手に持つのは、ビニール傘や蝙蝠傘、或いは唐傘。

 梅雨が明けてからというもの、無機質な笑顔の気象予報士は「今日もよく晴れて、とても暑くなるでしょう」を毎朝繰り返していた。   

そう、それ以外に言うことはないという口調と表情で。

 そして、今朝もまた、ニュースの気象情報は同じ台詞を繰り返した。

「今日もよく晴れて、とても暑くなるでしょう」と。

 それにも関わらず、太陽は舞台袖に隠れ、季節はずれも度が過ぎた天候に覆われている。

 今日が本当に七月の真夏日なのか。それともいつの間にか冬が来てしまったのか?

 携帯の画面を開く。そこには「2017年7月26日」と表示されていた。カレンダー、朝のニュース、それに自分自身の感覚と同じ、正常であるはずの年月。けれど、その数字や文字は何故か、ひどい文字化けを起こしたかのように淀み、ざらつき、歪みきっていた。それは、これから起こる悲劇を予知しているかのように……。

 

 2

 

 7月が終盤を迎えても、暑さは終わりを迎えるどころか、さらに勢いを増していた。

 地獄の最深部へと近づいているかのように、年々上昇する気温、最早人間の体温に限りなく近い日々の気温。

かの予言者が「世界の終わり」を予言するなら、1997年7の月じゃなくて、2017年7の月でしょうって、摂氏36度に揉まれながら独り呟く。

雨はおろか、曇りすら失われた橙色の日々。まるで異国の砂漠に置いてきぼりにされたかのような熱風と蜃気楼。肌を焦がす砂埃、彼方に視えるヤシの木と翡翠色の湖。此処がビルの群れが立ち尽くす東京だということを忘れてしまいそうになるくらい、それらが視界でとぐろを巻いていた。

 

けれど、そんな夏の日々と夢幻を掻き消すように、曇天の今朝は、冷たい雪が永延と降り続けている。

覚めることのない夏の悪夢が、熱や暑さに対する逃避願望を具現化して、こんな光景を見せているのか。そんな風に初めは思った。

だが、綿のような柔らかさ、 澱 ( よど ) んだ屋根やアスファルトを清廉に染める白さ 。それに、 肌に触れれば半透明の美しい身体を顕わにする結晶。

その質感、その色彩。作り物でも無く、別のナニカでもない、本物の雪。これは夢でも幻でもない、現実の風景なのだ。

しんしんと降る雪。時が経つごとに、焦熱に寒冷が無邪気にキスをしてゆく。そして、歪んで病んだ各々の痛みを、触覚或いは視覚で癒す健気な雪。

早朝、吊革で手首をつる匿名の彼女も、毎朝足首をつる匿名の彼も。それに、首を吊らされている無数のてるてる坊主も、どこか楽しげな表情を見せる。

バニラアイスのように甘い登校時間。元気な小学生、陽気な中学生、朗らかになる高校生。赤いランドセルが紺に染まることも、セーラー服のスカートが濡れることもお構いなしだ。

そして、日射病に倒れ伏していた野良猫や、水を求め彷徨い続けていた野良犬も、歓喜のソプラノやテノールを響かせている。

私もまた、夏に降る雪に興奮と喜びを抑えきれず、サンダルも傘も捨てて、裸足になって空を見上げた。

曇天というにはあまりにも純白で美しい空の色、永遠に続くかのような、無限に広がる白いパレット。

誰もいなくなったプールサイド。波の音だけが響く海辺の寂しさ。アイスクリームショップでは 閑古鳥 ( かんこどり ) が鳴き、自動販売機は稼働を止めたかのように無言だ。

歓喜と熱気の人々、無言と無音の夏の涼。

 

――やがて、その空を這い回り始めた、蟻のようなヘリコプターの黒い影の大群。パイロットも季節外れの雪に驚嘆したのか、規則的だった飛行がウネリぐらり、揺れる。

暫らくすると、彼らは低空飛行のち身近な高速道路や地表に激突し、爆音と共に黒煙と炎を撒き散らし始めた。

火と灰の臭い、雪に交わる橙色の波。唐突にあがる、いくつもの鮮やかな花火のような火柱。

誰かにとっては夏の風物詩、或いは夏の刹那が脳裏に想起されるような光景。人々は、それが現実的な重大事故だなんてことを忘れて、一様に拍手喝采を送る。

退屈な色と日常の炎上、病的に輝き続ける花火の火花。火が彩る抽象画のような、鮮烈な風景に見とれたままの人達に嫉妬したのか、雪は勢いを強め吹雪き始めた。

視界でうねる半透明の白蛇。臓器も無く目も無く、一心不乱に夏と世界に絡みついてゆく。瞬く間に汚れなきモノクロームの雪よりも、世界を汚すけばけばしい炎に鞍替えした人々の心身を窒息死させるかのように。

その無軌道であり純粋な息苦しさ。溶けたアイスキャンディーの虚しさ、泡の抜けたサイダーの切なさに似た感情を抱く私。

視界の遠く、あの燃えさかる夕暮のような橙を消せば、誰もがみんな、この降りしきる雪を再び愛するのか。

「清らかな白を愛せ! 獣のように純粋な雪を愛せよ!」

 そう高らかに叫んでも、その声は全てに対して無力であり、群衆の幼稚な関心を「私」にほんの少し傾けるだけであった。

 世界を掻きむしるかのように、より一層吹き荒れる雪。そして、雪が荒れれば荒れる程、心変わりを起こしてゆく人々。そう、もはや多くの人々の心には、雪に対する好意的な感情などなく、敵意或いは嫌悪感しかない。

 どこかのニュース番組のアナウンサーから発せられる、悲痛な中継の叫び。露わな肌を抱えながら走り去っていく少女、必死でまとわりついた雪を払い、屋内へと駆け込む少年。そうした人々を扇動する、消防車や救急車の悲鳴のようなサイレン。

 街頭スクリーンに次々と映し出される、相次ぐ交通機関の麻痺や、墜落事故の報道。それに、火災や雪の勢いがさらに強まっていること……。

 橙色と白の百年戦争。雪の子を火の粉が食らえば、その火の粉を雪の子が吹き消す。無限に輪廻するかのような、冷と熱が交錯し、斬り合う光景。

 最早、街の事物も人も、その戦いに携わる力などなく、運が良ければ傍観者、運が悪ければ被害者となっている。

 ある者は豪雪に抱かれ、体の機能も感覚も、そして心も奪われてゆく。また、ある者は猛火に焼かれ、身も心も無惨に食べつくされてゆく。そして、放置された車や建物は逃げる術も無く、次々に破壊されていった。

 雪と炎の戦いによって、秋のような、暑さと寒さが折半した天国のように快適な気温と化した七月。だが、その中で繰り広げられる光景は紛れもなく地獄となり果てている。

 八方塞の阿鼻叫喚な舞台。人的な力が限りなく無力なこの舞台の幕を下ろすことができるのは、袖に引っ込んだ太陽しかない。

 誰もがそう思い、そして、太陽が雲を引き裂いて、再び現れることを神に願った。そう、気象予報士が一カ月近く繰り返していた「今日もよく晴れて、とても暑くなるでしょう」の台詞を求めて……。

 

 3

 

……雪が降り始めて、一日が経ち、二日経ち、そして六日目を迎えた。

 積もり積もった雪は炎をも呑みこみ、無邪気にこの街を覆い尽くした。呑みこまれた炎も、消えるまで暴虐の限りを尽くし、ありとあらゆるものを焼き尽くした。

 そして、私も含め、逃げ遅れたが、生き残った僅かな人々。私たちは、雪が届かない高層デパートに逃げ込み、何所からかの救助を、雪を溶かす真夏の太陽の登場を必死で願っている。

 それにも関わらず、気象予報士はいつもの無機質な口調でこう発言する。

「7月31日、今日もどんより曇り空で、雪が降り続けるでしょう」と。

 

青蘭血の滴る星屑畑

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世界が呼吸を無くした時、12月は幽かに熱を帯びた。絶え間なく続く雪が揺らいで見えるのは、石鹸箱一杯の粉のせいではないし、渦巻きキャンディーのもたらす台風21945号の頽廃的な進路のせいでもない。
長靴よごれたヨモギの悲劇、星月夜に朱が足りないから、私は自らの喉を切り裂いた。38口径で撃ち抜かれる場面、その穴は暗い暗い輪廻への獣道となり、私の首に刻まれた断面はセカイとワタシとの境界線へと変わる。誰ひとり越えられない、熱病に犯された赤道。

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だが、未だに病まぬライムの木。首吊りの庭に投げ込むカッターナイフをくわえるのは目隠ししたままの政治家か、或いは涎を垂らしたままのシェパードか。
檸檬刻まれる断頭台、擬人化した異邦人。彼らを縛るものはエルサのレム睡眠だから、夢に夢を重ねたミルフィーユ、 意味に意味を積み重ねる餓鬼の積み石。三途の川は国道35号線の果てにあると叫ぶラッパを求めた彼女は、ベスパに乗ったまま断崖絶壁から飛び降りてしまった。
未だ訪れぬ終末。濡れた薔薇は赤いままで、深い蒼に染まることもなく曖昧な血を流し続ける。

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ロックンロール&アルコール・アンコールは?

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 酒とロック、酒と音楽。その密接な関係は、酔いが回れば回る程鮮やかさを増す歌声、心を掻き乱す旋律の鮮烈さに戦慄する感覚に、まるで二人手を繋いだまま、着地点も知らずにスカイツリーから永遠に飛び降り続けているような――

そう、寡黙と沈黙の支配するバーの片隅。或いは小さな自室、テレビも消して、クーラーも無言の夜。侘びさびの諸行無常、酒と女は泪のグラスで抱き合っている、酒と男は泪を肴にワルツを踊っているとでも嘯いてしまうようなアンビエントでムーディーな夜を過ごすには、所謂ゆとり世代の私にはいささか若すぎる。

そうなれば、やはり熱狂的で病的、熱く且つ冷めきった音楽が無ければ、孤独な好い酔いの酩酊酒を呑むことなどできない。フードファイターが水なしではホットドックの大食いで大記録を出すのが困難なように、ナルト巻きがなければ、昔ながらの中華そばが出来ないように、三つ葉がなければ親子丼が成立しないように。

 さて、ウィスキー1杯目、まずは60年代から聴こう。そう思いひっぱり出したのは、 MC5 『 KICK OUT THE JAMS 』

https://youtu.be/vfKhvzUdJoM

 彼らは政治団体との絡みが強く、レーベルから解雇されようが「マザーファッカー」を叫び続けたいわくつきのバンドだというイメージが強いが、そうした、どこか内的でネガティブな印象を真正面から殴り倒すような、滅茶苦茶で轟音な演奏。兎に角目立ちたがりのソウルフルなボーカルに被さる、これまた目立ちたがりの弾きまくりギターと全員コーラス&まくし立てる MC 。そして「お前が欲しい」「一騒ぎしようぜ」「俺はお前の男さ、ベイビー」といった、豪速球ストレート160キロな歌詞。

 小細工なし、小奇麗な演出もなし。灯油じゃなくてガソリンとアジテートで、ヒッピーのバーベキューの炎を強引に割り込んでくべているから、肉も野菜も爆発で炭になってしまっている。そんな光景を見れば、ウィスキーをもう1杯、ストレートでおかわりせざるを得ない。持ち球が直球しかなかった68年当時の彼らに倣って。

 咽喉や心臓が焼けるようなウィスキー、ストレートとガレージパンクは灼熱で身体と心を無軌道に燃やし続けるので、少しばかりの炭酸と、70年代のブルージーなフレイバーでクールダウンを。

  LED ZEPPLIN 、彼らはロックンロールやブルースのみならず、フォークや民族音楽等、様々な音楽を貪欲に吸収し、それを比類なきオリジナリティに溢れる作品へと変換していった。その巨大化してゆくバンドの中で、ジミー・ペイジのライブにおけるギターは、どこか人間味や大人の哀愁、そしてその蒼と並行して、少年のような(青さ)を湛えているような感覚を覚える。

 特に、ライブ盤『永遠の詩』に於けるスローなブルース曲、「貴方を愛しつづけて」での艶と悲しみに満ちたフレーズ。それとは対照的に、イントロの即興も含めて、ミスやズレも構わずギターソロを弾きまくるその姿は、ウィスキーボトル片手に大人の階段の踊り場で立ち止まり、ハーフ&ハーフの態なドヤ顔でヤンキー座りをし続けているような印象を受ける。

https://youtu.be/_ZiN_NqT-Us

 もう成功したし、強い酒でも呑まなければバンドも人生もやっていかれない。けれど、甘いコーラで大目で割らないと呑めない。そんな大人の感性と若々しい感情の融合が、彼の演奏、そして色彩豊かな ZEP の音楽に、純粋さと濃い青を刻みこんでいるのだろう。

 そういえば、レミー・キルミスターもコーラ割を愛飲していたが、彼の場合はウィスキーのコーラ割ではなく、コーラのウィスキー割である。呑み方が粋というより狂気。

https://youtu.be/3qSpvcKerGY

 ここでビールに交代。強い酒を続けて呑むより緩急をつけた方が気持ち良い、そう90年代、グランジロックのようなソフト/ラウド、静と動のように。
 グランジといえば、やはり NIRVANA がその第一人者であるし、私自身の音楽の目覚めのきっかけでもあるが、酒、ことに麦酒を呑む時は MUDHONEY を選んで聴く。

 アルバム名に『 Super Fuzz Big Muff 』と冠する通り、彼らは歪みエフェクターにファズを多用している。ギターはジュワジュワとした発泡性のひしゃげた音色で、それが鼓膜をジリジリと刺激するのだ。

https://youtu.be/_nGsT_qFMBs

そのブッ潰れた身体で跳ねまわる音は、どこか発泡酒を想起させる。ビールではなく、どこかチープさを漂わす(発泡酒)を鼓膜で呑んでいる感覚に陥るのだ。マーク・アームの塩っ辛く突き刺すような歌と叫び、脂っこく重く乱打するビートを肴に呑む麦酒っぽい酒、グラスの泡の動、琥珀色の静。

 そして、鼻から発泡酒、血管から発泡酒、新ジャンルで鼓膜から発泡酒という、第3のビールを体感すれば、ボロボロのジーンズ、穴のあいたスニーカー、ネルシャツで冷めきった渋谷スクランブルど真ん中にてヘッドバンキングしようが、六本木のクソッタレな高級パーティに泥酔して殴り込もうが、 NEVER MIND (気にするな)の精神を保てる気がする。

https://youtu.be/1khy9_E4h44

さて、炭酸で腹も膨れたところで、泡のない10年物の赤ワインと共に、 90s から80年代にカムバック。

THE SMITHS の繊細さ、儚さに充ちたポップなメロディー、そして、どん底且つひねくれていて、どこまでも文学的な歌詞は、優しさと辛辣さ、渋味や難しさと心にスッと沁みる味わいを同居させているワインと似ている。うちに帰りたくなる音、今でも病んでいる歌、心に茨を持つ音、 DJ を吊るし上げる歌。

https://youtu.be/GeG-7MYaqA8

80s は MTV の台頭もあって、映像を伴った煌びやかな音楽が表舞台でタンゴを踊っていた。その一方で、ノイズやハードコアパンク、ニューウェーヴといった、その後のオルタナに繋がる過激な音楽が裏路地で盆踊りを踊っているという、裏表が激しく、且つどちらのシーンも盛りあがっていた。

光り輝くコインの表と錆びつきながらも凄味のある裏。 THE SMITHS はその狭間にいた、ギザ十のギザギザのように希少な存在だったと思う。

ところで、先刻からモリッシー&マーの出会いのように、ドアをガンガン叩く音が聴こえる。モリッシーの気分で開けてみれば、マーには似ても似つかない隣人の Charming Man が一言「音楽がうるさい!」と。

土下座のち嗚呼、気づけば丑三つ時、コンポの音量は17に達していた。ウィスキーもビールもワインも、そして音楽も嗜んだし、そろそろシメよう。

明日は二日酔いか、それともロックンロールの続きか、そんなことをふと思いながら酒瓶を片づけ、コンポの電源を落として、今宵の酒と音楽に別れを告げた。

Sobbat Blew

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こうして切り裂かれた鏡面に映る水面下のチューインガムは、水晶体のようにいつか透明になる夢を見る。ミントの死体、季節外れの梅の味。
コンクリート・ヘヴン、ストリート・スーサイズ、Xtal,夢の中でAphex Twinの墓標に捧ぐフレグランス、夢の中で私が殺す全て或いは機関銃、夢の中でバスケットボール中に縊死することの難しさ、夢の中で狂うと夢の夢の中でも発作が起きた。
青に煉瓦を妬き印の如く刻めば、青は蒼より藍し。
青に因果と死期を求めれば、藍は哀より愛しい。

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然し麦酒が給水塔から溢れる×曜日、マザーグースの血の色は火、MOTHER2のエンドロールは何色?現れた電車内のWindow Licker.彼に対する抑止力はなく、スマートフォンの無法者にニューナンブ回転式拳銃を放てば私が懲役刑だと嘯く彼も大手町を通過した辺りでWindowLickerに成り果てていた。EEZに鈍感な私は世界の終わりを手放しで悦ぶが、最期の晩餐はハートランド・ビールを奪うだろう。
少女が見せる肥満のパンティに目を逸らさなければ私は黒い蝶と共に彼岸に行くべきであり、少女の見せるギーガーのような夢見る機械を愛でなければ、私は白い蝶と共に彼岸に行くべきであると。
そうして銀座は澱んでゆく、排気ガス、歩行者地獄、カメラの海、溺死する肖像権、三越からの投身、彼方の彼岸に丸の内、パラソルの紅い錆、藍色メメント・モリ

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