haiirosan's diary

散文とか

逢魔ヶ時の音色は夜に消えた

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https://youtu.be/qF6Lyg4MsHs

――水色のカーテンが揺れ続ける。透明な来客が砕けた海辺からやってきたので、私は唯殺し続けた。罪の意識、人間らしさ、それすら薄れた機械のように。
部屋の前の交差点で咲き誇るミスミソウは黒い葬列に踏み潰されてゆく。壊れた信号を渡った先の土曜日のカフェでは(彼)がカウンターに座り、一心不乱にハイネケン・ビールを飲んでいるが、何故か目の焦点が合っていない。「どうして」へばりつく咽、割れそうな西瓜と冷たい夏。彼女の手にはリボルバーが握りしめられている。「死んでいるの?」そう言った君は砂に沈んで、私は錆びたナイフを翳していた。
写し世の果て、平行する夕暮れ時。新宿の雑踏の中、悲しげなラストシーンは街頭の真っ赤なスクリーンに溶け込んでゆく。季節は12月、セーターは引き裂かれ、名前の無い少女の終わりすら、僕には思い出せなかった。
雨に銃殺されたパラソル。繰り返すエスカレーターの輪廻、未来、希望、失望、欠落そして敗北。硝子のように純粋であることを夢見ていた彼女は来る日も来る日も「明日が怖い、現実に呑まれる」と呟き続け、ある日校舎の屋上から飛び降りてしまった。
その肌は白く、柔らかなままで、いつの間にか皆死ぬような無意味な日常と共に穏やかに消えて――

水の中の葬列

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https://youtu.be/WK-Izu4JPNE

水の中の葬列 枯れ果てた揚羽蝶
色の無い夕暮れに 呼吸を喪う
揺れる視界 水死した世界
境界を失い 私は永遠に微睡む
蒼い夕景を彷徨い 赫い夜に横たわる
空っぽの柩 空席のない現世
夢が熔けても尚 覚めることが 怖いから――

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――翡翠色の朝明け或いは朝焼け。自転車の死、途方も無い大きな車の輪が廻っても死後を思索することは、Googleには無いからさ。そして匿名仮名本名に放火された冬の海辺が幽かに澱んで。
確かに僕らは異邦人だ。太陽が殺せと言えば、僕らは……
けれど、浮き輪のカフカは気にとめることもなかった。砂塵すら凝固する審判の前日、750ウィスキーボトル3とアスピリン適を食せば、ランチタイムに上下巻を読まなくても彼方の門は躊躇いなく潜れるから。そう、躊躇いもなく

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千里眼が刻む剃刀と檸檬の夢

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3階の窓から、僕らは滑空するグライダーが真っ白な紙人形の群れを轢死体に変換するのを視ていた。
砂塵を巻き上げ、首を或は胴体や手足を鋭利なその翼で切り刻む渇ききった景色を。
その刹那に色は思い出せず、円転するシーンの結末に、誰かの死体を隠していたことで唐突に逮捕された君の可憐な姿だけが、僕の脳裏にこびりついてさ。
血塗れの手、スライドする景色、記憶の中の人たち、暗いクライ施設、君と僕は誰なんだろうか?

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檸檬が置かれたカフェで私はずっと角砂糖をかじっている。ブレーキの無いフォルクスワーゲン、♭のない楽譜の隊列が煉瓦道で転倒すれば、ほら、障子越しに正座疲れの抹茶がアイスキャンディを砕き始めるから。
蟻のクーデター、ウユニ塩湖に入水すれば遺体も綺麗な気がするから、世界は甘味を憎しみ始めた。
僕らはこうしていつまでもいつまでもいつまでも壊れかけた剃刀入りのダージリンを啜っていなければいけないのかな。
足の無いテーブル、傾けたカップから逃げる感性、冷めきった感情を曝す淡い夕景、骨だけの鴉の群れ、かりそめ、かりぬいの、茜、穴の空いた蒼白な手鞠の中をくらくら廻るエンドロール。

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凍てついたウィンカー、林檎の轢断死体

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雨の七連符、私は凍りついたウィンカーの彼岸に見える、黒焦げの死体を眺めていた。
夜に隠されし恐怖、或は狂気、みんなの歌、蜜柑の姿態、未遂のレミ♭ファ
胡蝶
蘭 孵卵
鋭角 の託 児所
鋭利 なマシュ マロ
え、
私が暗闇の底に堕ちる夢の夢の夢の内部告発に、団体も全学連も無く、ただポーリーが残した湿気たクラッカーと弾倉の無いルガーが硝子越しに揺れている。
プレハブと非常口しかないホール
プレハブに潰された国旗の群れ
プレハブを溶かせばシュガーバター
そう、此処は終末の雨に浸された海の中だから、僕らは頭部を切断された魚の群れだし、あの茜色の林檎も例外無く轢断死体になっているはずだと山高帽は言っていた。ニトロとTNTをcocktailにしたような、極彩色の鬼がひきたてる裸足の少女が悪鬼に変貌するのはいつだろうかと君は考えながら。
ワイパーの動きが止み、ウィンカーもいつの間にか消えていた。
死体を詰めこんだタクシーの行き先はどこも死体ばかりで、彼女は生者を見つけるのに百年の孤独を抱擁しなければならなかった、と誰かが言っていたような気がした。

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Hell or hell with AnholexdalocS

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アマレットの夕暮れ或は朝明け、クリームソーダイロの壁、赤蟻が詰め込まれた終末の蜂の巣。マフラーで首を吊った少女がテキーラを翳す刹那に、君のストッキングは断線していた。
始まりもなく、気づけば地面に拡がる静脈血と片っぽメモリー
ハートランドと鏡に耽溺するパンクス
12月のまま散ったフェンダージャガー
Joy Division-Closer
With the lights out,

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世界との断線、他人との断絶、赤道直下の水死体に僕らは深紅のハイヒールを履かせてあげることすらできないのかもしれない。乱れたシーツに死の記憶すら残らないことを嘆く前にさ。
ソーダと裸足の百年戦争、サイダーにアルコールを入れた刹那に僕らは唯失ってゆくから。
そう、空き缶のブービートラップハイネケンで製作すれば。エメラルドブルーの脾臓を求めて彷徨えば、武蔵野スクリーンにて17歳の君と僕はGreen Infernoを凝視することも無かったような気がする。桃色と緑、時折朱が入り交じる快楽と絶望、それとも絶頂を。

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いつの間にか狂い咲く丑三つ時に私が溶けていたとしても、

Borderline Marmalade

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薬莢みたいに空っぽな1999年、夕暮れのような朝に僕らは有刺鉄線を一心不乱に掴んでいた。冷たい手、冷たいコード、冷めきった未来を赤い血が否定してくれるから、醒めきった今を僕らは嘘だと否定できるから!首のない人形に充たされたクレーンゲームゲームセンターの端でワンコインの首吊りすら叶わず7階建てのデパートが瓦解する刹那に僕の網膜を包んだ橙色だけが唯美しくて、僕はマルボロキャスターメンソールの吸殻に哀悼の意を込めたけれど匿名のランドクルーザーとオートメーションのコルベットは容赦なく若き日々を蹴散らしてゆく。

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境界線上で空虚と無垢なまま漂い、君は洗濯機に漂白剤をいれ忘れたと永遠に嘆くからさ、君は雨にうたれたまま琥珀色の彼方の夕景を愛撫していた。もう円転しない針時計もう清浄さを忘れてしまったコインランドリーに1989以降の銀貨を注ぎ込むことも忘れてしまって。カールス瓶麦酒の涙、チェスター猟銃の一次試験、リトマス紙は未だ変わらず、二次試験に合格したのは空っぽになった剥製の僕らだったことは映画館の床上に墜落したポップコーンしか知らない。

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マーマレードの夕暮れに浸されたパンが、フレンチトーストになれないってことにいつの間にか気づいていたのに。

赫と蒼が収斂して、僕らは散りゆくだけ

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ステンドグラスが砕け散る刹那、教会の鐘は無慈悲を刻み、あまりにも眩し過ぎる光が僕らを焦がす。
フリージアカラーの空を漂うアークバードの獄炎、ブルーバード去った街に、鉛色のサイレンが鳴り響く。
散らばる色、散らばる光、散らばる――
散りゆく羽、散りゆく夢、散りゆく僕ら。
いつかの海岸線、少女の麦わら帽子はブックカバーと共に溺死して、少年のサンダルは砂塵に抱かれて喪われてしまった。ひび割れたビー玉の記憶、紅葉が枯れゆくような、儚い記憶。

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――1989年、裸足のままのクリスマスに観た『汚れた血
スクリーンの前に座る少女は赤い靴を履いたまま、決してそれを脱ごうとしなかった。血だまりがカーペットを覆っても、サンタクロースの首がガードレールに切断されても尚。
17歳のまま死にたいと嘆く彼女の瞳孔には蒼いソナチネが永遠と流れていた。白と黒を揺らす旋律、何処か諦観したかのような、渇ききった涙。
赤ワインを零す天使が彼らに救済を与えることは無く、僕らは傍観者として水の中のナイフを握っている。メランコリーの行方不明、青いままに刻んだいつかの6すら色褪せてさ。

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過ぎし冬を弔えば、僕らは――