haiirosan's diary

散文とか

無表情のクリームソーダ

f:id:haiirosan:20190217211322j:plain

終幕の風景はいつも穏やかだ。清廉な蒼を切り裂く朧な光明、眩し過ぎる収斂に、時計の針すら呼吸を止めて__
コンタクトレンズが剥がれるように、水中に溺れるように、悪い夢が醒めるように――ぼやけてゆく世界
街も人も冷凍されてしまうけれど、その開いた瞳孔だけは刹那に澄み切っていた。

無表情のクリームソーダを溶かしたのは細波と太陽の刻む3つの音だった。
砂浜に埋まる赤子の手、空っぽの乳母車に詰められた注射器、笑うのは海岸線の白いワンピースだけ。
__誰かの心臓が理由無き銃弾に貫かれる、白線で別たれしサンダルを茜色に染めるのは誰の――

f:id:haiirosan:20160414173543j:plain

哀色がアスファルトに反芻する
枯れたアイリス 三月
砕けたアスピリン 水泳
壊れたアノニマスと曝かれた__
漆黒の帳は血のイロ
雨に揺れる花片は何色?

――イロを想起するモノクロ・ストリップ、踊り子の靴擦れに嗤う聴衆、涙はドロップ味、君は溺れるトマトソーダの猟奇殺人痕、
黄色は狂気、青色は静寂、赤色は__
空白ばかりのジャポニカ
静脈血で黒ずんだ紅ノート
折れたペン
折れたネック
割れたスクリーン
私は「何」だったのだろう?
私は「




首の無い客引き、敗血に浸された2月

f:id:haiirosan:20161008165041j:plain

蠱惑の帳に火が放たれし時、影踏み遊びの無邪気は脆くも斬り捨てられる。錆びついた諸刃、有刺鉄線の夕暮れに貴女は切創無く、夜を迎えられるのか?
彼方の星が世界を傍観する。人々は今日も自ら心臓を吐きだし、灰色の刻を紅く染める――
街は虚ろさを漂わせて、路上の吸い殻に火を放つ。Anonymousの群衆、首の無い客引、透明な血に浸された2月。出血多量に気づかずに僕らはスクランブル交差点で救急車に轢かれる。サイレン亦サイレン__遠い夏の日、暁光の花火くすんで、プールサイドが炭化する。
(飛び込む)だけしか選択肢の無いゲーム中盤__どうしても「死」を忌避しようとすることに終始するあなたは惨めさと醜さを次第に湛えて、私は鋼鉄の朝が地下鉄を過ぎ去る刹那に朱が針時計を染める場面をぼんやりと思い浮かべていた。
不眠症の夢は太陽の嘲笑に焦がされ、終わらない黒煙がネオンライトの世界を抱擁した。
抽象的な蝶、アスファルトのパレットに零れるカケラ、雨が罪の痕を拭い去る。
――残された遺失物に寄り添う、冷たいだけの左手。朽ち果てゆくその墓標に、手向けられる花はいつも造花だ。

f:id:haiirosan:20160331175135j:plain

――遠い夏の日、暁光の花火くすんで、プールサイドが炭化する。
(飛び込む)だけしか選択肢の無いゲーム中盤__どうしても「死」を忌避しようとすることに終始するあなたは惨めさと醜さを次第に湛えて、私は鋼鉄の朝が地下鉄を過ぎ去る刹那に朱が針時計を染める場面をぼんやりと思い浮かべていた。

誰もいないはずの後遺症の窓

f:id:haiirosan:20190203194025j:plain

――鳴り止まない蒼い警報、アスファルトを這い回る錠剤の粉塵、真紅のカーペットを染めるのは青ざめた焼夷弾だと、誰が認めるのか?
遠く、遠く、藍霧に潰されたHighway509,ひび割れたバックミラーに映るのは終末のスニーカーと、茜色に乱れた手形、赤い涙零す誰かの瞳__
硝子の墓標、如月悴む×曜日を彷徨う亡霊。眼前に表れた血塗れの着ぐるみと、彼女を連行する黒い貴婦人はあの3番線から身を投げるのか?
誰もいないはずの後遺症の窓から覗く誰かの縊死体は(私)のような姿をしていたから、わたしは地下鉄3番ホームにどうしても降りることができなかった。
やがて、逢魔ヶ時が紫の絵具を手に取って、樹海のような街は色を喪う。
――誰の呼吸が、言葉が真相なのか?嘘は影イロ、穴の空いたカンバス、剥がれたフィルムの先に、もう暁光は射さない、と__
歯車が軋む夏の氷上、切り落とされしブーゲンビリア、飛び込み台は満席だからプールの水はいつも蒼い、涅槃頽廃、六道酩酊、時計の針から紅色が脱落したのはいつ?解らない六法全書を読み耽りながら、私はコーヒースタンドに火が放たれるのをずっと待っている。
霙に揺らぐアスファルトは色彩を読み耽る。無人の車(だけが)暗渠を這い回るけれど、それらがイロを汚すことはなく、止まない慈雨と共に永遠と物語を刻み続けていた。

チョコレートミントの有刺鉄線

f:id:haiirosan:20190121204117j:plain

――巳の刻に僕らが彷徨う螺旋階段、最後に待つのは琥珀色のエンドロールか、それとも__
凍傷を起こした秋の青い昼、静脈血の彫刻が色褪せてゆく8限目の理科室には、唯スカーフの残り香だけが、煙るストーブと灰色の紙芝居で色喘いでいた。
__やがて喪われていく秋の牢獄と色彩。焚き火に抱かれた茜色の刹那すら、誰かの渇ききった靴音に掻き消されてゆく。
チョコレートミントの有刺鉄線、誰もいない公園、消えない吸殻、ソーダ水にヒ素、鳩と無邪気な疫病、火が放たれたシーソーゲーム、首吊りのマフラー、注射器の砂場、乳母車の人形、三面鏡に写る4番目、行方知れずな風船の三原色、砕かれたコンタクトレンズの罪を(誰に)擦り付けることができるのか?
__8061番地、罅割れたフロントガラスに突き刺さるワイングラスに神の不在を嘆く鴉たち……断罪の薬莢を焦がすのはいつも無垢な心臓だと彼女らは嘯く。冷め切ったアスファルトに拡がる壊炎、道標が十字架へと変換されし時、最期の晩餐に饗された血染めの薔薇を「モノクロだ」と糾弾するのは__
「碧が収斂する刹那に貴女は死んだ」
「平行線の夢から脱落した少女は、紫鏡の夕暮れに引きずり込まれた」
ピンボールボルドー漬けの心臓から放たれる時、母胎の貴女は円環構造の海を見失うけれど、その高く高く上がったファールフライは藍空にも、誰の記憶にも遺らなかったから――

f:id:haiirosan:20190121204204j:plain

藍色の彼岸花

f:id:haiirosan:20180923123350j:plain

https://youtu.be/vpQjoiVSvmI

藍色に霞む鏡割れて
虚ろ霜月、赤く染まる花
青い鳥が刻む彼岸
遠いサイレン 君の悲鳴と__

「静けさだけが この世界の全てだった
終幕のエンドロール、名も無き墓標
溶けるフィルム、箱舟、淡い五線譜
砂漠 揺れるドライアイス 音階狂って」

彼岸花と、刹那散る君
藍色だけ、褪せた季節巡る

(青い彼岸花 記憶の氷砕けて)

148-76120-96の「存在しない住所」

f:id:haiirosan:20190106170542j:plain

思考の水槽が錆びた車輪に刻まれてゆく。
夕刻は色を喪い、私の網膜はアイスピックのような蒼を刹那に齎し、やがて永遠の茜が滲む。
__浮游夢は覚めることなく、唯アスピリンが砕け散る繰り返し繰り返しに。
ウィスキーグラスの水も何処か虚ろな眼をしたまま、幽かに揺らいでいるから――
「孤独な夕刻は何処までも燃えあがっていたけれど、モノトーンのセカイは無表情な蒼白さを保っていた」
世界線にたった(一人)遺された水色の空気清浄機。
其処に注がれた綿飴に青酸を混入すれば、茜色の点灯が永続性を催す。

点は「無人駅を描 
いた紙芝居」の水飴 
線上だった。  に視える青
銅の蜃気
楼ですら、裸
貴女は奇 麗だと嘯れど__沈――
渇ききった地下の天窓に制服の少女達は助けを求めるけれど、148-76120-96の「存在しない住所」に救済措置は施される筈は無く、誰かの赤いスニーカーと右手首が無慈悲に転がるだけだ。

f:id:haiirosan:20181118120128j:plain

やがて、翡翠色のプールに沈みゆく彼女らは、いつも「終わり」を求めていた。
赤く染まったスカート、空白のハイヒール、錆びた指輪__
救いの手が水よりも冷たいことを知った時、誰がこれ以上生きたいと思うのか?

薔薇と彼岸花のイロゴトはモノクロ

f:id:haiirosan:20180830073836j:plain

イロゴトのモノクロとカケゴト、喪うフィルムに君の33巻は存在しないから、
燃えあがる車輪に刻まれた夕暮、季節から離脱した貴女のワンピースは灰燼と変換され__プールサイドの悲鳴、蝙蝠傘に抉られた心臓の色はモノクロ、渇ききった哀歌と止まない雨に、水槽はいつまでも彼方の三日月に笑いかけていた。
流星と頸動脈張り巡らされ、青空は瞬く間に感電した朱を帯びてゆく。空虚の縊死、或いは916-3と悲嘆の革命→拡声器が儚く響く校庭の果て、錆びゆく鉄棒から延びる影の少女が切断されて__
火炎に包まれた水中都市、未遂の剃刀群れる午後3時を誤認すれば貴女の石榴は揺らめいたまま。氷鏡に注がれた紅茶とカステラの彷徨う甘味料を毒だと云えば、この世界は甘美と変死しかない。

空白の睡眠時間は自己嫌悪だ
空白の朝は暖房を冷房に
空白の昼はかき氷の焼死 
空白の夜は故意に衝突
空室の4は赤いシーツ
空室の40は淡いレース
空室の404で拭うドレス
空腹の今はシロップと折れた傘
空港の君はドロップと壊れた翼
空欄の貴女はテロップにいない
空欄の私はスクラップの死亡記事

硝子の牢獄に閉ざされた47の右目。執行猶予の48の左目が視た、最後の海も墜落者の羽毛に覆われて、此処は虚ろな墓場となってしまった。死体が時折揺れる海岸線と2590,1/-7462 2ーー
「カッターナイフで切り裂いた薔薇と彼岸花の色はモノクロ♭だった」

f:id:haiirosan:20181231095650j:plain