haiirosan's diary

散文とか

空白の記事

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空白の記事に唯、水色のソーダが滲んでゆく
文字化けを何よりも怖れる人々は
永遠に真相に辿り着くことはなく――
44面に刻まれた君のモノクロ
色彩に深く潜られた轆轤
廻る廻る廻る、桃色の太鼓
彼女の首より彼の首の方が切り口は綺麗だ
彼の静脈血より彼女の動脈血の方が綺麗だ
花瓶に埋められたクリームソーダの悲劇
花片散る前兆は空が紅く染まるから
バニラスカイ
痩せこけた藍色
海岸線、凪ぐ潮騒
慰みの砂遊びは、
背中に迫る匿名の母親の悪意と
煌びやかな待ち針が私を愛撫するから
彼方のパトカーは
傍観者のまま
にこやかだ
にこやかなまま
にこやかなままなんだ
教えて欲しかった、本当のことを。
彼らは私を救ってくれなかった
私は死んだ方が救われると思った
神はいない
奴らが俺を嘲笑っているのは判るから
神はいなかった
新宿三丁目の路地裏
酒瓶の意味
酒瓶を砕けば殺人の
酒瓶を捧げれば傍観者
酒瓶を拒絶すれば私の居場所は
出口
出口の無い迷路
正体の無い怪物
終幕の無い物語
語り部はいつも、真実を映しだす「青」を手にしているというのに__

青いシュレッダーの深層に潜むのは

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凍てついた鶏の首が夕刻に跳ね回る。ブレザー冷めた路地裏の罪は深紅のペパーミント、シュレッダーの深層に潜むのは青いペンキだからと囁いた彼女はドライジンをライムで炎上させて――
いつの間にか私を囲う熱砂の鉄柵は日々の泡と錆びついた瞳孔を揺らめかせ、
――「 夏」
夏の色は長襦袢にこびりついた血
夏の夢は茜色の通続音
夏の終わりは青い焔に焦がされて……
藍色の冷却炉にハイヒールが零れ落ちた刹那、淡い飛行機雲は実体を伴って「お終い」を呟く。
流転する死体をプールサイドで眺める夜。
鳥たちは嘆きの讃美歌を吐き散らし、惨めな魚は酒樽へと投身してゆく。
救いのアルコールが死へと向かう熱病に拍車を掛けることに、救う為のアルコールが破滅への道標だということに、私は気づいていたのに__
やがて、鬼門が開かれて、私は知らない貴女と貴方とプールサイドの変死体だ。

百二十分の屛風

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ひび割れた新宿スクリーン
地下鉄に翡翠の海が流れ込む
炎症を引き摺ったままのスカートは
無垢と海塩に切り裂かれ
見えない水死体 可視の海月
変色を訴える水彩画
紅色の水平線に救いは無く
吊革を見つめる瞳は光すら無く
傍観者であることが罪ならば
救命艇に乗せられるのはいつも
壊血病のライムと
穴の空いた浮輪だ
硝子の悦楽、水の中の花火
冷熱だけが彷徨う夜に
シャッター音が心を閉ざす
彼或いは彼女
散りゆく未来すら
散りゆく為の今すら
死んだ眼で踊り 忘れて
藍色に突き刺さる訴訟
黒服の舞台と偽証罪
断線したマイクロフォン
議事録に刻まれた言葉は何も――
白紙、沈黙の鶯色に誰もが足 首を攣る
黒い影に装飾された眼球
暗い影に装飾された意味?
百二十分の屛風には井戸からもがいてはもがいては這い上がるワタシの姿が映し出されて――
白衣の死体、外科室の祈り
呼び鈴は故障を偽装
渇いた血を引き摺りながら彷徨う私は
4の部屋を何度も何度もノックを、

画鋲雨と砂漠の壊死

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画鋲雨に刻まれる匿名の吸い殻
消え去る青い炎に
誰もが喝采を浴びせる
行方不明のネオンライト
血塗れのレインコート
渇ききった未来すら溺れ死んで
意味の無い傘を永延とさす君は
暗い太陽を黙殺する
「それとも、曇天の救済」
崩落した教会に刻まれた雨痕
十字架を愛撫する黒衣
突き刺された傘の色は終わりの啓示
血塗れのシートで眠るのは
血塗れのシートで親指を貪るのは
血塗れのレインコートを脱ぐのは
艶やかな、或いは無残な死の憧憬を
鈍色の車輪が刻む夢を――

破綻への凱歌に啓示の詞が刻まれる。秋風の蜩は壊死した人体模型、道徳を切り返すカッターナイフが最期の林檎を囓るとき。
大罪の選択肢
楽園はビルディングの深層世界にあまりにも溺れていた。砕け散る硝子、睡蓮の救難信号、崩れ去る全ては無言の憎悪を差しだすから、私はもう__
虚ろなのは始まりからだった
座標を見失ったまま、裸足で歩く砂漠は血に染まり、左眼(だけに)流れ込む砂は許し難い痛みと――
9%,9%で構成された方程式
数字で充たされた血管
内臓らしき不定形が口から滴る
通りすがる修道女は私を嘲る
私はワタシを打擲する
車道には死が遊泳して

夏の雨はいつも残酷だから、

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雨の通続音がラジオノイズに溶ける
最期の子守唄がサイレンに変換されても尚
水灰色の旋律は止むことなく
錆びついた人魚の叫び
匿名の少女がナイフを握り締めた時
街の柔らかなネオンが幽かに揺らいだ――
……楕円の楽園、花火と隠匿
色彩罪はモノクロームのトローチに溶けて、7月は霜柱に貫かれる
冷めたアイスティーの矛盾
冷めたアイスコーヒーの青
冷めたアイススケートの赤
__滴る血すら意味を成さないのに
夏、夏はいつも残酷だ
見つからないサンダル
溶けるだけの氷
首吊りのクーラー
紅が永遠とうな垂れて
海面に蒼の救済は無い
蝉の死骸が灯台で揺れる
蛍の明滅に湿気た0.3/3mm
最期の紫煙が消えたとき
花火の嘆きは喜劇へと――
やがて、炎は冷たい笑みに掻き消された
発見された足首
ドライアイスの偽装熱
サーカスの猟奇殺人
未だうな垂れたままの太陽
水面に浮かぶ彼岸花の青
早過ぎた埋葬
血に濡れたウエディングドレス
無人の結婚式と赤いピアノ線
降りしきる雨、
降りしきる雨が
色彩を水葬へと導く

空白のプール、鬼門と不協和音に__

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緩やかな業火に影絵が溺れる
輪郭すら喪った「誰そ彼」に
私は赤い靴を求めて彷徨う
裸足の熱傷
青い砂漠
淡い帳
葬送


音色がイロを喪う
音がワタシノ意識から
剥離する
鼓膜の楽園?
網膜の獄炎?
「鬼門をくぐり抜けたから__」
シームレス
シームレス
冤罪少女は水死体のまま、空白のプールの中でそう囁いた。
指先の色だけが、アスファルト
しがみついては崩れ
しがみついては崩れ
淡い業火と劈くような悲鳴、哄笑。
歩道橋にて、血溜まりの紫陽花に焼かれる彼には、誰一人として見向きもしないのに。
貴女の包丁と返り血
彼の傷痕から滲みる「無」
逆さま+-%はざまさ かしまレイコノロイハとけないJPOP3:00JUNKFUCKシロップ入りスターバックスデトックス
「祈り、愛、政治、宗教、淫らな死」
俺らは此処で何を燃やせばいいのか?

裸体の美術館
僕らは死体のような目
硝子の浮遊
死、死体を叫ぶな!
批評家は不協和音を奏でる
欠損の×弦
空白の座標に
私は(無)しかないから、
――貴女は高らかな叫び
穴の空いたベッド
汚れなきウェディングドレス
血、血、敗血の悲鳴
水色と記録
不協和音の鉄塔
影色の彼女の首を轢断したのは
傘に憑かれた裸足の少女だった
破れたノート
錆びた鉈
血を流すピン留め写真と記憶
止まない雨が隠滅する色彩に、君はいつまでも壊れたソプラノを捧げて__

猫の海で「牛の首」の話を――

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墜落したブラックボックスだけが、微かな産声をあげた。
0ばかりが刻まれる画面に、少女はリキュールを突きつける。
水色の海、深紅の空、翡翠の日曜日
イロに憑かれた月曜日に、彼或いは彼女が絶望の鈍色を選ぶことを誰が――
そう、「猫の海で(牛の首)の話をしよう」
殺戮の神はそう呟いたけれど、此処には全てが消失した形跡しか残っていなかった。
不在票が齎した怪異を、彼女らは如何に弁護するのか?
破られたF.K『判決』の最終頁、彼の心を塗り潰したのは、途方も無く空虚なボールペンの傷痕だった。
緩やかな死と指先の敗血症、音階は脆くも崩れ、テトリスは永延とブラックアウトしたままだ。
嘆きの植木鉢に供えられたウォッカの腐敗が告げる晴天に、蜃気楼は唯、自動筆記を繰り返し続け、
風切り羽が花火と共に墜落してゆく。遊覧船に佇む48の亡霊の拍手喝采に、錆びついたシャンデリアだけが救難信号を発信する。
明滅する光、色彩を剥奪したその左手に、そっとメスをいれるのは__
見えない水が穏やかに囁く「肥満な死」は、きっと自らのことでは無いと、這い回るしかない廻廊の廻間で私の眼は渇ききっていて。
酸素を失うだけの葬列で、いつまで君は造花の花束を揺らし続けるのか?