haiirosan's diary

散文とか

枯葉の悲鳴、永遠の残響

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茜切り刻み、青の千鳥足が7Fに導かれ糖度に犯され赤蟻の水死体が彼方に浮かぶ。
平坦な煉瓦をいつまでも糾弾する議会に、首を残した者は誰一人としておらず、唯、その可憐な切り口から血と砂糖を流しつづけていた。
蒼白な森を永遠と彷徨うのは、きっと無垢な足跡だけだということに、誰も気づくことなく。
踏みしめるテノール……あまりにも早過ぎた、幼き喉仏を切り裂くサキソフォーン
震える揺りかご、乳母車の空白
鼠、注射針__箱舟に押し込まれし累累たる不明瞭の死体に射し込む太陽が、茜の痕跡を暴きだす。例えば血に飢えたバタフライナイフ、例えば誰かのベッドの砕け散った染み、
例えばグラスワインと飛蚊症詐病――
――差し向けられた水差しの悪意と着色料
「貴女が埋めたはずの、針時計はもう未来を射すことはないから」
窓の外、転落したままのセーラー服が、あまりにも穏やかな通続音を這い回らせた。
咲かない花の夢と、青い春を塗り潰した絶望の影
広がりゆく地雷原、夜明けは極彩色を抱えて、燃えさかる世界に届かない祈りを捧げる。
――骸転がる暁に、かつての温もりはあまりにも冷熱を帯びていて。踏みしめた枯葉の悲鳴すら、永遠の残響と共に鳴り響いていた。

#詩 #散文

モノクロームの十字架

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ページの空白、海中の炎
折れた首とペンが世界に潤いを催す。
渦巻くコンタクトレンズ
ブルーレットの境界線、「青」
揺れる大動脈に突き刺さる待ち針
ミシンの奏でるパンクロック
糸、赤い糸は枯れてモノクローム
暖炉から覗く足首の形は__
M O
氷水が空に溶けて
太陽は永遠のアスファルトに幽かな笑みを零した
可憐な凍傷すら、
吹き荒ぶ秋風は
冷凍庫に閉ざされていたはずの南を欠損させ
静かな朝は虹色を帯びてゆく
無軌道に聳え立つ翡翠色の楼閣
(不可視の計略)が回廊を這い回り
車道と1001は炎上と怨嗟を繰り返す
余りにも虚ろな未来は
monochrome
C4の確定性に浸された死すら受け入れ
欠損の神はその名も無き墓標に黒い雨を注いだ
黄昏に讃美歌が漂い
崩れゆく街はモノクロームの十字架を握り締める
__或いは救済の存在する線上
炭化したブランチに葡萄酒の眠り……
白煙漂うプールサイド
渇ききった夢だけが 浮上する終末と化した

#散文詩 #詩 #即興

実体の無い天使と奇数

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鏡を遊歩する炎
三面鏡の迷宮
夕刻の轢死体引き摺られ
反転した海は赤みを帯びてゆく
__
(天井)
落下するクランベリー
安楽椅子が催す葡萄酒の醸造
埃まみれのグラスは砕け散ったままだ
螺旋階段から墜ちる快楽、
注射器の海に浸る白昼夢、
正方形と逸脱の楕円形に書き込まれし数式に
「最期」のチョークを粉粉に砕いてしまう。
――描かれた希望を薬液で塗り潰すのは
いつも実体の無い天使なのに
血の滴る酩酊
血の渇く昏迷
血が唸る雷鳴
赤珊瑚ノ花花散って__
あまりにも静かな緋色の呼吸器
奇数の配列に幽かな冷熱が忍び寄る
眠りのアスファルトは革靴の鼓動に蹂躙されて
左手の9,
彼らは無意識の審判を微睡みのまま受け入れる。
__
「切り裂いた自らのスカート」
「茜空に罪の視線」
「世界との断裂」
蠢く左手とダガーナイフ
実体の無い天使の悲鳴に花束を
実体の無い天使に火葬を
――やがて、いつかの少女は12.5を振り翳し
鈍色の奈落へと柔らかに墜落していった。

円卓上の陽炎

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紅海拡散する波打ち際
血の芳香剤散らばり
火薬庫は臨終を迎えた
治癒すら望めぬベッドの骨折
重油漂う暗渠に、カナリア泣き叫ぶ
匿名の傍観
教会は紫煙に浸された
「誰か」の影と懺悔が永遠と揺らめいて
逆さまのパノラマ
順行する三面鏡
ひび割れた希望
ひび割れた絶望
罅と未来
罅と過去
目眩と酩酊
眼鏡を喪う
足跡
指紋
__
__行方不明者はいつも、
死とアルコールの残滓を鏡に刻み込む。
円卓上の陽炎
鼠花火と針時計の逆行が炭化した時
全ての左手が朽ち果ててゆく
太陽への敬礼
地下からの咆哮
血清の無い救済
片眼の瞳孔閉ざされて
曇天に埋められしアルファベットの17は青ざめて――

透明な本に刻まれた改行

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屍夏の太陽の下
十字架すら砂塵へと帰して
青はより鮮明になってゆく
彷徨うコンクリート・ジャングル
火葬に付されても尚、血を滴らせる人々が
最後のソーダ水を拭き零してしまう
……琥珀の波が黄昏時を洗っていた。
「無言の静寂」
柔らかなブランケットが覆えば、
横たわるダガーナイフすら、
隠し通せるから、と。
――気の触れた鉄塔から
間断なく流れる警報に
世界は未だに心拍数を乱れ打つ
救済の無い罪と雨に濡れた太陽
水鏡に映る亡霊たちは
幽かな跫音すら、黙認したまま
__伸ばされた手、或いは突き放された手
徐々に浸透する鈍色に
その表情はより深い匿名性を帯びて__
透明な本に刻まれた改行は
雲路に抱擁された凍死体のように蒼く、
いつまでも淡い揺らぎを湛えていた。

忘却の月、救済の糸

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婉曲する剃刀が、夕暮れの肌を切り裂く。
幽かな翡翠色の希望すら、
麻酔もなく轢断されて__
304号室に遺された、空白の浴槽に溺れた脾臓。 
無表情に突き刺さる画鋲が
そっと笑みを浮かべた時、
遺影から拭い去れない血が流れだす。
氷結した彼岸花の断末魔に、
埋葬された「か つての 希  望」が
微かに呼応する。
再び忍び寄る、鋭利な影。
止むことの無いサイレンから、
そっと逃れる鴉の群れ。
やがて、深紅が死体を隠すとき、 
誰もが鉈を振り翳した。
影絵散りばめられし蒼白
遊泳する幽かな炭酸が爆ぜて、
灰色の地上は瞬く間に火の海と化す。
業火の渦中、水を求め、
或いは
(救済の糸)を求める人々が灰燼へと帰してゆく。
アマレット融解して、夕凪は瞬く間に酩酊する。
獄焰咲きほこる神無月、
睡魔に犯された「忘却の月」に__
静かなコンバースに、あまりにも穏やかな穴が空く

ダガーナイフの寝室

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うつらうつらと死の午睡

ゆらりゆらトうたたね ヲ ……

解体された毛布

丸まったままのブランケット

横たわるセダン、揺らめくままの蜃気楼

薔薇色の黄昏に焦土の嘆き――
――鳴らない目覚まし時計、屍の敗血。
暗幕に閉ざされた部屋、
暗渠に浸されたベッドには、

確かにダガーナイフを携えた、「彼」が佇んでいたような気がして――

蒼白のワルツに暗幕が被さり、世界は瞬く間に不協和音に浸されてゆく。

「__________」

雨、 不可視の雨が革靴を水没させ、誰かのハイヒールを切断した。
__血も流すことなく、最期に笑っていたのは、無垢な黒猫と裸足の少女だけだった。

反転するはずもない三面鏡に、奇数の茜色は滑らかに消失してしまう。
切り刻まれた畳の下、
垣間見の「名も無き死者の薬指」
罪なき白磁の骸すら、黄昏は不穏に染め上げ、唯、沈黙だけが其処に――

私にだけ聴こえる「紅色のサイレン」反芻する音色の水彩画、
或いは拭えぬ死と、気の触れた__
ニライカナイの夢うつつに、いつまでも浸る? 
――壊れてしまった夕暮れは、瞬く間に消失してゆくのに。