快楽の落第、罪悪と災厄
とんかつと忖度、狡猾と謀殺
蝕紅の柔らかな抱擁
止血剤が黙視されて
触れる指先震えるままに外科室の扉叩けば
さすらいの斑紋は未だ安穏とした公園前を騒乱に陥れた
しかし殺傷と殺生を誤読したカフカのFは暗黙のまま沈黙
ざらつく市役所は火薬と白けて堕落
半透明の私は着地点の無い死者のまま。
浮遊する金魚に憧憬を抱け!
浮遊する白骨に長襦袢を催せ!
王のような爪痕はいつも化膿した咆哮を不規則に刻む
へばりつく刑務所にショパンと暗譜
錆びつく弦、磔ル神、前髪、血染の三つ編み
「天井裏のホルマリン」
屋根裏の君は二重の鉄条網にもがくままに笑う
地上600mのカッターナイフはいつもカナリアのメロディー
不協和音と黒蜥蜴の舞踏会――左手首の爬虫類は真実を艶やかに描きだす
始まりの無数の道化師のワルツ
拡声器の革命と運命すら交錯しない交差点を傍観して、
私の消えた屋上はいつも裸の夕日を曝け出す。
解凍されぬ空中庭園の彼方、柔らかに閉じてゆく夕景は、出血のような光に充ちて――
散らばる水死体と日傘、裸のハイヒールをこの世界に暴きだしていた。
水に沈む浮き輪に染みた、極彩色の鬼の笑顔
折り重なる水槽に隠されし甘い毒は、狂い咲く蘭鋳の遊泳を切断した。呼吸を失ったまま、境界線すら無き31を、死体のような未来を
夢うつつに――
春はチル 解決されぬ冬のセーターとオアシスアイス
桜花爆ぜ、淡く遺るは水彩の静脈血
柔らかな積乱雲、そっと去って――
華やぐ花火に深度不詳の火傷を負えば、いつかの青空も灰色に俯く。