haiirosan's diary

散文とか

水鏡に暴かれた終幕

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細波の夕暮れに世界が溺れて、
游泳をやむことなき「黄昏の名」が
誰にも聞こえない凱歌を歌う――
――瞬く間に夜が忍び寄り
刹那に過ぎゆくその旋律は
いつまでも暗渠の波間を漂っていた。
……影絵揺らいで
冬を、心を、(わたし)を殺して……?

鮮やかなる死、冷熱の殺意
涼やかなる桃色の境界線
君ならざる者跋扈して混迷
不穏な指先は瞬く間に冷たく__紅く__
匿名の投身が魅せた
影絵からは出血も無く揺らぐままに終幕。
暗幕に放たれた炎は、
終わらぬ夕暮れを描きつづける
奇数の犠牲者
これは、ゆめのなかだから
眼前の深紅溢れるエレベーター、
「存在しないはずの10階」に向かう揺らぎと
「誰か」の鼓動
降り立つ先は__
水鏡に暴かれた罪と流血、
フラットに捧ぐ不協和音
水彩画に憑かれてしまった「 」の左手からのものだと、無垢なる秋は高らかに叫んだ。
正体不明のままに糾弾された「 」
静かな光さした場所
――此処には幽かなアトリエの悲哀と呼吸だけが、柔らかに漂っている。

「記録に遺されない未解決事件」

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風船のワルツに水槽と呪詛を提示したことになれば

人々は私を殺人者だと指さす間もなく、

瞬く間に罅割れた硝子に

正常を咀嚼する解釈すら皿の上の「豚の血」をワインに一匙
最期の記事に載せられた死亡は、
紛れもなく春雷の残り香だった

かつての栄光と希望は穏やかに隠蔽され、

フェンスを掴む少女の右手は握力を忘却し、唯、無慈悲な太陽の傷痕が

空の境界を亡骸へと変換する。
__見えぬ神は街の色彩を消し去り、蒼白な左手が墜ちてゆく。

「鈴蘭の造花に憎悪を刺し向けろ」
変容した羽虫は、喪った羽根を自傷しながら、そう呟いた。
大地を這い回る毒蛇と綿飴の不可思議

4階の窓辺に映る縊死体とカクテルに奇数は存在しないから――

春画のネオンを隠匿する、いつかの桜はノイズに揺らいで

街の怨嗟と埋められた、幾千の死体の幻に揺り動かされている。
――記憶 渇ききって

私の唇から幽かに零れた敗血すら

「無」を緩やかに震わせただけだった。

西日に拐かされし黄昏雲、

痕跡もなく「記録に遺されない未解決事件」として、4月は黙秘を続けた。
ただ、砕け散る(死)を選び取ったフィルムには、忘れえぬ記憶として確かに_

クリームソーダに冒された境界線

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積み木の街は、逆行世界の夕刻に呑み込まれてしまった。
網膜に刻まれた鳥たちの行方
逆再生されるサイレンの悲鳴
――揺らぐ影も躍動するナイフも正体を喪い、

体温無き戦場に置き去りにした指輪の記憶すら、名も無き人々は忘れてしまう。

琥珀の蝶々が飛び去って、冷めきった秋茜は自らの失血死を偽装する。
少女たちの死に贖罪は無く、枯葉の塹壕には火炎瓶が間断なく投げ込まれた。
焼け落ちたのはきっと、あの日の朝明けだから

此処では軌道を喪った星星だけが呼吸をしている__

「剝ぎ取られたガーゼの秘密」

造花と花火、喪失を水に浸したのは、あまりにも無慈悲な時雨だった。
毛細血管散りばめた昼の夜、
血の滲むベッドの焦げ痕
燃えあがる空を糾弾するのはきっと
――

火を放つ奇数、むらさき飽和する、
――或いは融和と変死。

白昼はいつも夢を夢とユメノ

淫らさに砕け散った宝玉の色彩に気が触れて、
イロが浸す透明な水、硝子の罅__
かつては白磁を湛えていた少女たちは、可憐なままの左手を奪い合う。

クリームソーダに冒された境界線には、未だに罪と罰の赤が隠されている__

そう嘯く老賢者を横目に、この世界は再び、炎と血による浄化を選択してしまった。
春の中立地点、太陽だけは純真なまま

全てに不公平無き熱病と昏迷を与え……
――蜃気楼を忘れたはずの円卓上が、ほんの少し揺らいで、壊れた僕の網膜ト

『こころ

えた。

プールサイド、花火と私の死体

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奇術倉庫-プールサイド、花火と私の死体 Poolside, fireworks and my corpse by 奇術倉庫 | 奇術倉庫 Magic Warehouse | Free Listening on SoundCloud

 

プールサイド 溺れる花

夏の色は 蒼く淡く

プールサイド 溺れる夏

君のイロは 腐りきって

 

ぼんやり 私の死体

夏色 青く染まる

 

(プールサイド 君の花火 プールサイド 私の死体)

 

境界線 壊れる花

君の色は 赤く脆く

境界線 壊れる夏

君のイロは 渇ききって

 

だんまり 花火と 私の死体

夏色 朱く染まる

 

(境界線 君の花火 境界線 私の死体)

 

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水彩の静脈血

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快楽の落第、罪悪と災厄

とんかつと忖度、狡猾と謀殺

蝕紅の柔らかな抱擁

止血剤が黙視されて

触れる指先震えるままに外科室の扉叩けば

さすらいの斑紋は未だ安穏とした公園前を騒乱に陥れた

しかし殺傷と殺生を誤読したカフカのFは暗黙のまま沈黙
ざらつく市役所は火薬と白けて堕落

半透明の私は着地点の無い死者のまま。

浮遊する金魚に憧憬を抱け!

浮遊する白骨に長襦袢を催せ!

王のような爪痕はいつも化膿した咆哮を不規則に刻む
へばりつく刑務所にショパンと暗譜
錆びつく弦、磔ル神、前髪、血染の三つ編み

「天井裏のホルマリン」

屋根裏の君は二重の鉄条網にもがくままに笑う
地上600mのカッターナイフはいつもカナリアのメロディー

不協和音と黒蜥蜴の舞踏会――左手首の爬虫類は真実を艶やかに描きだす

始まりの無数の道化師のワルツ

拡声器の革命と運命すら交錯しない交差点を傍観して、

私の消えた屋上はいつも裸の夕日を曝け出す。

解凍されぬ空中庭園の彼方、柔らかに閉じてゆく夕景は、出血のような光に充ちて――
散らばる水死体と日傘、裸のハイヒールをこの世界に暴きだしていた。

水に沈む浮き輪に染みた、極彩色の鬼の笑顔

折り重なる水槽に隠されし甘い毒は、狂い咲く蘭鋳の遊泳を切断した。呼吸を失ったまま、境界線すら無き31を、死体のような未来を
夢うつつに――

春はチル 解決されぬ冬のセーターとオアシスアイス

桜花爆ぜ、淡く遺るは水彩の静脈血
柔らかな積乱雲、そっと去って――
華やぐ花火に深度不詳の火傷を負えば、いつかの青空も灰色に俯く。

草木灰の鬼

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https://m.soundcloud.com/haiirosan-27/hbypu1xqbvbk

草木灰の鬼」

柔らかな赤 宵の左手
切り裂く朝 光は淡く
冬の遺灰 消え去って
記憶だけが 刹那揺らぐ

路上の鬼 冷たい道
紅い靴を 遺して去る

此処にはいられない、悲鳴と殺意に充ちて
ただ、流れる血を抑えることができない
何処にも居場所がない 人を喰らう永遠
終わりを望むのは大罪なのか?

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沈黙と藍色の百年戦争

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自由の羽が藍色に濡れてゆく

青い春に暗影を墜とすのは、いつもあまりにも華やぐ桜だったから、

その可憐な縊死は突き刺さるような刹那に浸されていた。

塩素水に波紋を遺す、ひとひらの花びら

霞のような桜花を反芻する 二度と枯れぬ運命の色

最期のドアを開くのはきっと、ラストシーンを夢見た少女の左手だから

冷たいままの手、水色のままの手首を拒絶の感情が切りつけた

眩しすぎる光に充ちた終末は、存在しないはずの神によって隠匿される。
奇数に溺れた『予言の書』

7に彩られた楷書体に滲む暗褐色

焼け落ちた書店に誰もが渇ききった手を伸ばす時

糾弾された肖像画は幽かな微笑を浮かべた

トパーズグラス砕け散って、世界はアルコールの蜜に酩酊する。
夕暮れの子どもたちは分裂する空に、無邪気な祈りを捧げるが、彼らの瞳は徐々に茜色に浸されてゆく。
暗い影、クローゼットに隠された夕日

「開くことの無いシャッター」

白椿の夢は柔らかな桜花に掻き消され

プラスチックの造花は穏やかに血を喪ってゆく。
__あまりにも遠き春

――あまりにも遠き夢

「  」
沈黙とサイレンの百年戦争
障子に躍る青い影絵を紅で染めた?
埋められし薙刀と錆びた酒乱咲き乱れ、猟奇の香りを偽れないから……