haiirosan's diary

散文とか

草木灰の鬼

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https://m.soundcloud.com/haiirosan-27/hbypu1xqbvbk

草木灰の鬼」

柔らかな赤 宵の左手
切り裂く朝 光は淡く
冬の遺灰 消え去って
記憶だけが 刹那揺らぐ

路上の鬼 冷たい道
紅い靴を 遺して去る

此処にはいられない、悲鳴と殺意に充ちて
ただ、流れる血を抑えることができない
何処にも居場所がない 人を喰らう永遠
終わりを望むのは大罪なのか?

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沈黙と藍色の百年戦争

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自由の羽が藍色に濡れてゆく

青い春に暗影を墜とすのは、いつもあまりにも華やぐ桜だったから、

その可憐な縊死は突き刺さるような刹那に浸されていた。

塩素水に波紋を遺す、ひとひらの花びら

霞のような桜花を反芻する 二度と枯れぬ運命の色

最期のドアを開くのはきっと、ラストシーンを夢見た少女の左手だから

冷たいままの手、水色のままの手首を拒絶の感情が切りつけた

眩しすぎる光に充ちた終末は、存在しないはずの神によって隠匿される。
奇数に溺れた『予言の書』

7に彩られた楷書体に滲む暗褐色

焼け落ちた書店に誰もが渇ききった手を伸ばす時

糾弾された肖像画は幽かな微笑を浮かべた

トパーズグラス砕け散って、世界はアルコールの蜜に酩酊する。
夕暮れの子どもたちは分裂する空に、無邪気な祈りを捧げるが、彼らの瞳は徐々に茜色に浸されてゆく。
暗い影、クローゼットに隠された夕日

「開くことの無いシャッター」

白椿の夢は柔らかな桜花に掻き消され

プラスチックの造花は穏やかに血を喪ってゆく。
__あまりにも遠き春

――あまりにも遠き夢

「  」
沈黙とサイレンの百年戦争
障子に躍る青い影絵を紅で染めた?
埋められし薙刀と錆びた酒乱咲き乱れ、猟奇の香りを偽れないから……

親愛なる全ての水曜日

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浮游する綿飴と夏藍、

血が染みた神の愛撫、

行き場を失くした指先に茨が刺さる。

眠りと肺の苦痛をラムで沈めれば、ブルーレットは血痕を浄化するのか?

訪れる?訪れない?

視えない砂塵が視えないままに旗を揺るがし月と火焔瓶を隠蔽する

親愛なる全ての水曜日に烈火が放り込まれて、死者は砂糖水と握手した。
奇数とマクベスに路上のキス、
救いなきソーダ水が錆びゆく

飽和する未来と、呼吸すら苦しい日々
8mmに映る暗い暗い内臓たちはあの夏の日を思いだすのか?

空っぽのプールサイド

白いスニーカーが塩素剤に柔らかに包まれて――

――やがて、終末の水彩画に水色の水が注がれて、世界は淡く瓦解してゆく。
あまりにも柔らかな青と白は、全ての血を浄化し、裸足の壊死すらも救済へと導いた。

ソーダ色の蝶蝶が夏を愛撫する時

風鈴の群れは救われる為に息を止める
溶けだした記憶のアイスキャンデー
熱病を冷却するガラスの無音
過ぎ去る文月が柔らかに砕け散って
__

変拍子の亡霊が迷い込む、偽装の廃墟。

明滅するモノトーン、鳴り止まぬワルツと水彩画の記憶。

平行する秋の牢獄は、あまりにも澄みきって

茜の水色は逃れようのない黄昏時に抱き寄せられるまで、

永延と煌めき揺らめいていた。

 

西新宿のブルーベリービル

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西新宿の遺棄
ブルーベリービルと隙間の海に濡れて
ほら、凍傷は奇麗だ
放棄された西新宿
もう動かない歩道に寝転ぶ
瞬く間に咲き誇る鏡像
瞬く間に咲き誇る脾臓
瞬く間に遡るモノクローム
揺らぐフィルム
抑えられない内臓
試験管に林檎
赤い金魚が忘れた笑み
とうめいをさんびせよ
アルコールの罪と罰
とうめいを暴いた深紅
着色の果て
動脈血
8mm
裁決
椅子、悲鳴__
注射器と薬莢
解放戦線上のコインロッカー
此処は限りなく透明から遠いブルーだと、彼はなくしたままの鍵を水たまりに捧ぐ
青ですらない蝙蝠傘
折れたままと翼綻ぶ
やまない雨に祈りを捧ぐ死者
鉄塔の彼方から、決して届かぬ神は何処へ?
呼吸を止めた大人と 
嗚呼、色鉛筆砕け散って
呼吸を繰り返す子供たちと
刃毀れしたままの地下鉄
掻き消された救済
名も無き墓標のような硝子に映る遺影たちですら、緩やかに去ってゆく

網膜のゾアとアスピリン

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白磁散りばめられし水色に
瞬冷の春は幽かな暖かみを帯びて
全ての埋葬された遺体に無垢の祈りを捧げる。
例え、青ざめた爪先が
「鬼」の頸動脈を引き裂こうとも――
__モルヒネの笑み
アブサンの残り香、
12月の空席、
拐かされし太陽、
オレンジ轢断した罪と罰の断片
左手の革靴、暴かれた視界の裏とコイン
「網膜のゾアが選択肢を迫る 」
模型と化した都市はかつての呼吸
或いは「人形」としてのアイデンティティ
群青のパステルとフィルム上の形而下に
(死)として形骸化する。
果たして、彼らの元素記号は解体することなく、針を忘れた×空を彷徨う透明性に拮抗できるのか?
私にはそれが判らなかった。
存在しない(紅きあやめ)
あのイロをアスピリンが暴きだす時、
海岸線を流れゆく百合と白いワンピースは瞬く間に罪に濡れてしまった。
――泡沫、蒼い路地裏の記憶さえ__
傷だらけの裸足が、
透き通った水槽の砂漠を彷徨う。
右眼を這い回る蜥蜴と影
覆面喪った白衣 早過ぎた納棺
私の爪が催す、悲劇の末路は
いつも地下室の天井に描かれなかった黒猫の余韻と「   」
剥がれ墜ちる境界線
青い砂漠の砂を全て
私の血で固めることができたら――
60F,チョークの跡

#散文 #詩

着色料滲む終幕

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彼方、幽かな杏子飴漂って、
全ての砂糖は終着点を見失ってしまう。
(三面鏡の裁判)
それすら、動かぬはずの彼女はその首を揺らしてしまうから、私の指先から果糖と着色料滲む。
踏み散らした「藍」
白骨のエンドロールは緩やかに吸い込まれて
__暗幕__
秋雨に踊るるライト煌めいて
凍てつくブーツ浮かんだまま
暗闇に投影された躑躅揺らいで
夢の深層は蜜色の水に浸される
黄昏のヴァイオリン、
救済の四弦が調律を乱した刹那、
不協和音に溺れた世界は為す術もなく
崩れ去ってゆく。
色彩狂って
――最期の譜面が炭化した時、
聴衆が自らの敗血で左手を洗うラストシーンすら――
秋の残像は夜と死体を引き摺り、境界の深層へと運び込む。永遠の白線から逃れることのできない少女。彼女は、いつか現れる深い深い闇を求めて、朱に染まった死の足跡を蹂躙するように歩き続けるが、どこまでも明度に充たされた光だけが、暗い暗い影を照らしていた。

蜂蜜色の黄昏

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紺色飴溶けて曇天
糖度に犯され赤蟻の水死体が、彼方に浮かぶ
平坦な煉瓦をいつまでも糾弾する議会に
首を残した者は誰一人としておらず、唯、その可憐な切り口から血と砂糖を流しつづけている。
「眠り亡き桜の記憶」
水色のスクリーンから零れ落ちて奇数を喪う。
モノクロームの網膜が剥離して)
__静かな
あまりにも静かな朝に__
蝶と花片が混濁して、
春は行方不明のままだ
欠落したブランケット
水面に焼べられた炎
シャーベット、錯乱して
夏の三面鏡に細雪が彷徨う
(秋のオーケストラ、鬱金色)
黄昏に灯されし蝋燭は蜂蜜色を纏い
全ての蟻を浄化した。
やがて襲いくる闇は、炭化した焼死体すら飲みこみ、出口の無い霊安室と、消えた蜜色の光の前に独り佇む。
色彩の漣去って……
月光の残影漂う銀盤
歪みに歪を重ねて、幽かな水色すら侵蝕してゆく。最期の鴉が飛び立つ時
糖度の焼け落ちた硝子が弾けた__