haiirosan's diary

散文とか

明晰夢と茜時の表象

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崩れかけた境界線の障子の向こう

紫陽花の炎が、亡骸を抱擁し続ける畳を柔らかに葬る

幽かな雨音 通りすがる揚羽蝶に彩られて

――色褪せゆく刹那すら、清廉なる青の熱病を携えたままだった

造花の彼岸花香りたつ雨暁

薬指の標本に収斂されし紫の蠱毒

匿名の指輪に色づけをする

微かな足音

鈍色の刃先が水音に浸された時

此処には血を流す君と

左手を血で洗う貴女しかいないから――

明晰夢と茜時

数列崩壊と配列配電盤乱れた心肺

やがて私の左耳から零れる耳鳴りは、表象のシーツを打擲して――

赤蟻と紫鴉の群れ、百年戦争がもたらす夕暮れのイロは

どちらが正解だったのだろうか?

名も無き怪物が夕闇の無人駅を永延と彷徨っていた

渇ききった瞳と

唇 アスピリン

澄みきったアルコールが惑わす罠に

光無きあやかしの眼差しは私の虚ろさに似ていて……

――わたしは三面鏡に映る(誰か)を切り裂くことを選び取ってしまった

玩具色 夕刻 針時計刻む憂鬱なれば

此処には心なき生存者がいるはずだと__

白紙に希望なし、罪なき缶ピースが吐露する罰

青に凌辱された灰炎が

あの日の刹那を彩っていたんだ

「私」と黄昏と世界の終わりの音

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https://youtu.be/y4ebJNj9JxI

夕焼け刻むピアノ線 誰もいない教室の奇数
冷めゆく熱病 鴉散りゆく刹那
「旋律なきサイレン」
無表情な悲鳴を奏で
暗い影を世界にそっと導く

イロ__色を喪いゆく葬列が
遺失物と死亡記事を探し回る
――溶けない茜色 焼け落ちた世界に独り
空白、血と花束、無音のエンドロール
消えない茜色 からっぽの世界に独り
空白、血と花束、無音のエンドロール

紅さすカーテン越しのお終い
むらさきのゆめ 色鮮やかに
消えゆく明晰夢 暁のステンドグラス
硝子砕けた刹那
「旋律なきサイレン」
無表情な悲鳴を奏で
暗い影を世界にそっと導く

切り裂かれた「赤い靴と首の行方」
空白、血と花束、無言のエンドロール
引き裂かれた「青い服と君の行方」
空白、血と花束、無言のエンドロール

夕暮のゼリービーンズ溶けて、

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刎ねる首鞠蹴れば白粉朱くなりにけり
転ぶる排骨唐傘ちぎれ雲淡く
花びら濡るる身毒丸
唇刺すは麻痺セリ長月
――映し鏡映さぬ虚ろな鋼鉄
陰鬱な因果律に鼓動を求めても
此処には何も無いことを知れば
ブラウン管はノスタルジアではなく
悲劇の象徴だと、
そう、モノクロの着色料が嘯く
白黒ゼリービーンズ溶けた葬夏
ざらめ糖散りゆく水面揺れて
彼方の灯火は私にとっての絶望なのか
――或いは希望であるのか
分からなくなってしまった
かつて、甘美であったはずの夢現すら
酔毒に浸されて
赤い手が一つ





硝子窓にへばりついてゆく
朱色のマッチ擦る12月に太陽はドレスを纏い
刹那の死を選び取った
彼方 儚く笑う月は
欠損と美を携えて
二度とは灯さぬ夕刻のラストシーンの記憶を
柔らかに噛みしめている

茫葉に隠されし百日紅の気管支

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紅葉のフィルムに逆行する溺死が浮游する。

血に濡れても尚、伸ばす手とサイレンの唸り

白衣が爪弾く猟銃のざらつき

救護されるべき血小板に明日がみえない

細波のような遠き雨音が、心拍を拐かして__

「此処は藍色と宵色を見失った街」

暗渠明滅、蒼白ノ空白ト記憶

……不可視の鬼が隠れ潜み、可視の呪詛が充血するままに伸びた髪。

貴女の最期の左手が、汚れなき水を求めていたことすら、きっと忘れてしまうのに――

彼岸花の素毒に触れ、あの揚羽たちが私を嘲笑する

光渦巻くままに嘯く羽根は鬱金イロに脱皮して

あまりにも陰惨なる秋空を眩き、水彩画へと塗りかえる。

――いつか飛び立つ夢すら、気管支の絶望と猜疑心が

また一つ、何処かの胡蝶の夢を奪い去って――

車輪の下と平行世界

暗転した水鏡に映る轢死体の真相

止まない渇き、

百日紅の真相、

パレットに滲みる終わりの狼煙、

翠緑に抱かれた宵枕は韻律と旋律を打擲して

車輪の下のヘッセは少年時代をアスピリンの影に隠す

―― いつも放棄されるのは、言葉なき雨後のマニキュアなの?

剥がれそうな爪色と すれ違う夕景と影の街に

逆さまの蝶は杳として行方不明のまま

この空を泳ぐ羽根は鬱金色に溶けてしまったから、

誰もが俯いたまま

錆びた簪に滲みゆく己の血に気づくこともなく……。

海辺のような暁、痛絶

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累積せり警告を業炎に投げ入れ
波間のような沈黙に浸れば
私と「わたし」の縊死体が
幸福そうに揺れていた
水面に浮かぶ左手が掴む救命の偽装
偽りに偽りを重ねた手錠
錆びついたうつつ、時計の針折れて……
(夕暮れ夢)は 
カーテンから射し込むナイフが切り裂いて
蝕まれた錠剤が 忘れかけていた偏頭痛を齎す
網膜に浮游する春雷の幻惑
網膜に降る雨に 誰も傘を差しだすことは無く
――
桜花深層、蠢く酩酊の蛇切り裂かれ__
此処には終わりなき憂春が
通続音として鳴り止まぬ……
削がれた耳
剥がれた目 
裸足の薙刀破傷風が添えられれば
地蔵の側頭葉の待ち針は
いつまでも鈍色の光を放ったままだ
透明が私の体内を浄化して
深遠なる蒼の心肺に
幽かなサイレンを鳴らす
数式に形成された、海辺のような暁
光亡き清廉さと淡い囀りに
淘汰される死すら痛みを忘れて――

カステラ滲みる砂場と電気椅子

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深層の洞窟を駆け回るラスコーの亡霊

出口なき迷宮に抱えた首すら諦観を交感する

足切り裂く砂の薔薇、右目切り裂くルイスの剃刀

崩れる教会石化硝子

溶ける十字架茜に染まり

AM.2:00,アスピリンの翠緑は明度を深めて……

攪拌する太陽を人差し指で掻き乱したベッドの下に秘めたマチェット
あまりにも無機質な摩天楼のようなアパート

退屈な蜥蜴……奇数から飛び降りたとき

そこには苦しみの無い快楽と眠りが待っているから――

クリームソーダ狭間、境界線、傷痕の水色

『えほんとなまえのないかいぶつ』

カステラ滲みる檸檬夕景

甘味料と着色料で肥大化した世界に

絵本のラストシーンは血に染まるままに手をふる

ぐりとぐらのきぐるみと歯車欠けた針時計の老爺のロッキンチェアー軋む

仮想紙幣と合衆国の炎上、電気椅子の快楽とブランケットの染みを(添加物)と叫べば

私はわたしのままで絞首刑に手を引かれて、いつかの砂場で笑っている

彼方の終末を描くのはいつも、刹那に消える飛行機雲の絵筆だった
深い蒼に閉ざされし希望

へばりついた酩酊

濁ったままの白い目

鬱屈を剥がす終わりの夢の中ですら、私の左手は血に塗れている……

造花の桜花とクロール

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脾臓飾られしフィルムの内面のフィルム
零れ落ちたクロールの残影
バタフライの鮮やかな水死体
彼女らの影は 止血剤を無効化して――
熱砂に気の触れたステンドグラス
かつての鮮やかさを救済もなく喪い……
十字架が少しづつ色褪せてゆくことを、
誰もが黙視してしまう。
砂時計狂えば頭痛零れ墜ち
硝子亡くして花散りゆく
30秒の敗血は水鏡に浸透して
瞬く間に君の記憶から零れ落ちてしまう
__あまりにも眩き夏の刃物
蹂躙された?打擲された?
ありふれた致死と私の遺書
アルファベットの痕跡は
殺意と無意識に冒された指先を震わせるから――
もう一つの快楽
水彩の毛細血管
暗く淡い影にひた奔っているはずの紅は
その色と正体を喪い__
__散る造花の桜、
浮遊する翡翠藍と
クロールを繰り返す魚座
あの日の青い春を描きだしている。