崩れかけた境界線の障子の向こう
紫陽花の炎が、亡骸を抱擁し続ける畳を柔らかに葬る
幽かな雨音 通りすがる揚羽蝶に彩られて
――色褪せゆく刹那すら、清廉なる青の熱病を携えたままだった
造花の彼岸花香りたつ雨暁
匿名の指輪に色づけをする
微かな足音
鈍色の刃先が水音に浸された時
此処には血を流す君と
左手を血で洗う貴女しかいないから――
明晰夢と茜時
数列崩壊と配列配電盤乱れた心肺
やがて私の左耳から零れる耳鳴りは、表象のシーツを打擲して――
赤蟻と紫鴉の群れ、百年戦争がもたらす夕暮れのイロは
どちらが正解だったのだろうか?
名も無き怪物が夕闇の無人駅を永延と彷徨っていた
渇ききった瞳と
唇 アスピリン
澄みきったアルコールが惑わす罠に
光無きあやかしの眼差しは私の虚ろさに似ていて……
――わたしは三面鏡に映る(誰か)を切り裂くことを選び取ってしまった
玩具色 夕刻 針時計刻む憂鬱なれば
此処には心なき生存者がいるはずだと__
白紙に希望なし、罪なき缶ピースが吐露する罰
青に凌辱された灰炎が
あの日の刹那を彩っていたんだ