薙刀の如き光刺す秋の血小板
彼らは自ら傷つき 自ら血を流す
踊る影絵
欠損すら忘れ
血を纏う黒焦げのワルツ
幽かに遺る水緑の清廉も
やがて茜の牢獄に引きずり込まれて
葡萄棚垂れ落ちるシャーベットは
匿名の心肺を柴に染めて――
夏の終焉、麦わら帽子を喪った人々により
やがて放たれる獄炎にすら
柔らかで毒毒しきイロを懐かせるから――
照光曝す白日の流血
暗緑に隠れし殺人者と黒猫はいつも
花蜜滴る轢断死体を狙っている
8mmを携えた愚者
架空のロザリオ
神を逆さの絞首に処した時
彼らは淫らな手指を露わにする
蝙蝠熔ける夕靄に紫深く揺らいで
――トレモロ――少女の赤い靴の紐(だけ)が
夕茜に染まる宙を舞い踊る
剥がれたマニキュアと黄昏
行方不明の隠れんぼの記憶
或いは今もずっと――
救済なき砂塵と因果律
終秋のかさぶた曝されて
季節を愛撫する蝉時雨は不協和音を奏でる
茜と鬱金の明度に眼をやられ
盲目の憂鬱が色を亡くして彷徨っていた――
燃えあがる
倫理の造花
色めいて
煙る刹那に
瞳孔開く
第三次の末路は無限の廃墟と温もりなき遺体、彼方のサンスクリット、
黄道――血が染みた……
砂塵の鼓動に抱かれゆく大蛇、
毒牙の泉に松葉杖が飾られ、
形骸化した王は
その玉座から動くことは無かった――
夕暮に五線譜融解して
旋律なきファンファーレが
悲鳴と抱擁を交わす4の廃団 地
拐かされし子どもたちの遊戯は
ピエロの笑みと
ダガーナイフが告げる深紅の終幕――
水中の天鵞絨 琥珀に沈む
乾きゆく沙漠の祈りのような戦火
熱病ト夢
熱病ト夢魔
熱病ト夢中夢
……救済無き因果律が崩壊していけば
きっとこの病も奇数と共に
不可視の砂塵と供に消えてゆくから
水のないプールのナイフ
隠されし藍を求め彷徨う巡礼者たちは、
蒼影の砂漠に引きずり込まれてしまった。
自らの正体をなくし
傷無き破傷風に悶える暁
鈍色の奇数
偶数で瓦解する膿のような、
沈黙のコンパスの針が心臓を貫く時
青ざめた太陽と月が融けあうから――
パステルブルーの沈黙
凝固した泡雪に血が滲めば
やがて訪れる黄昏が
拭い去れぬ闇と
鋭いナイフを携えていることに
二重の君は気づく
上海瑠璃揺れるチャイナブルー
春の昏迷に黄昏し造花の笑み
記憶溺れる着色水に
砂熱の夕焼けが突き刺さって――
躑躅揺れて気の触れた夏
沙熱に溺れ
焦熱に壊れ
投げ込まれた心肺
50の固執に水色笑う
水のないプールを愛撫する追放者の祈り
――蜜なき救済に
蜜蜂の鼓動が崩れ落ちた時、
あなたは左手のバタフライナイフを
錯乱のままに酷く握り締める……
石榴飴の着色料は死の色
夜色のカマツカの甘美に揺すられて、通続的な水音は私に緩やかな酩酊と睡魔を催す。
……仄紅く冷熱を帯びた水底
そこでは秋の牢獄から脱獄した影が
ゆらゆらと彷徨っていて
季節は亡骸と化した
血塗れの刃先を寒風に晒したまま――
砂漠色、毛細血管、蠍、砂塵
砂の雨足に煽られ偶数の残影を引き摺るのは反転する車輪の下、四月の亡骸だった、
散り散るちりぬる花火、逆さまの視界
桜花夢魔病ム毒蠱毒狂るる遺体視る――春を誤りし鼓動なき温もりも無き身体埋まる花びらの下、酒宴の果てに遺るのは鬼色の君と、青いハンカチを選択してしまった私、
ことばなきわたし
あおざめたさいれん
ことのはかれてしたい
__
感情の無い蒼白が世界を抱擁して、
彷徨う人形は欠損に欠損を繰り返す
死体の温もり 滲む茜色
呼吸停止の季節
動かぬ針時計
昨日公園に佇む鬼の形相をした少女は、未だに隠れんぼのお終いと、夕暮れ時間を待ち焦がれているから。
カルキ無き水槽
睡蓮の葉に隠された遺体
その冷熱を夢みる魚は
いつの間にか虚ろな午後の陽射しに包まれて……
網膜から剝離するスクリーン
曖昧な祝祭のような、
綿飴のような火刑に
自らの体温すらも忘れてしまう
障子沈められた蒼白
カルキ無き水槽に笑うのは
シャッターレンズと化した群衆の目――
その目に映る金魚の眼は
漆黒に浸されていて
浮游するばかりの光は
やがて青の紋様に 更なる色を湛える
漂う青、オアシス・アイスが乳化して
棗椰子に仕組まれた榴弾が3を高らかに叫べば
砂漠都市は焦土と化して
砂塵の譜面のFin.が見つからない
即興な牛頭の赤子が即興の不協和音を歌う
微かな「水」を掲げていた王座も
その義眼を二十日鼠に掻き取られて__
彼らは刹那の吐血すら、
蒸留酒の痕跡すらも、
殺人未遂として審判へと差しだす
蜜柑色の少女が最期の炎をくべる時
此処にはもう何もない
上海瑠璃と麝香唸る雨
アレゴリーの花花融解して、かつて水色を湛えていたはずの空も、天鵞絨の終幕を垂れたままだ。
――やがて、全ての輪郭を曖昧にするイロに濡れて、(あなた)の思考と左手に茜が滲む。
上海瑠璃と麝香唸る街――レプリカのカクテルが酔酔を齎す時、私の網膜はステンドグラスの散りゆく幻と金箔雨散る幻覚に乱されて……
最期に映るのはきっと、反転と色素によって暴かれた、この世界の深層だから。
鬼の遺灰縺れあう此処は血の菜畑
忌みの深淵に漂う曇と村雨淡く
彼方、うぐいす色の現世は生ける屍揺らいで――深紅煌めく境界線に
あなたの瞳は血線を滾らせて
蒼き陽炎揺れる八月のスクリーン。
水を亡くした世界に齎す、潤いなき幻覚に溺れれば、足下の蠍の跫音すら気がつかないのに。
残像染みつく刹那、溶けゆく記憶への救済措置として、色の無い錠剤を咀嚼して――
濾過なき水と藍ざめた心臓
絶夏の花火を夢みた花束は
外科室のような世界で醒めない夢と
冷めきったゆめうつつを彷徨い
霊安室と暁の扉を静かにノックしたんだ
死に覆われた、凍結せし桜花の冬
凍てついた笑みを零せば、氷柱なりし季節の骸
――透きとおるままに融解すれば
其処には誰もいない水色の風景が拡がっているから……
迷宮のようなクーラーボックス
熱病と春に酔い痴れて 烏揚羽纏わりつく花のふり
青い炎に焦がされたまま
咲き誇り滴る蜜はヒ素の色
蛍火うつろう雨脚切り裂く宵の音
明滅を輪廻する幻影或いは実存
光散りゆく夏の記憶は無く――
私は唯、アスファルトの感情を
ひた奔る情念に焦がされる夢をみていた。
灰色の水槽 黄昏屛風に踊る金魚も
いつかは呼吸を喪ってしまう
濾過なき水と藍ざめた心臓から零れる
素毒の着色料が夕刻を宵へと変換させて……